漫画、テレビアニメ「NANA」の喫煙描写に対する抗議文・要請
(集英社,著者矢澤あい,日本テレビ,JCB,コナミ,日本工学院に送付)
→ 集英社と矢沢あいさんからの連名の回答(2006/6/27)
→ 日本テレビからの回答(2006/6/30)

平成18年6月5日

漫画、テレビアニメ「NANA」の喫煙描写に対する抗議文と要請

日本禁煙学会
理事長  作田 學
181-8611三鷹市新川6-2-20
杏林大学神経内科教授室内
E-mail
FAX 0422-47-5931
URL:http://www.nosmoke55.jp/



(日本禁煙学会からの抗議と要請)
 漫画,テレビアニメ「NANA」において目に余る喫煙描写を直ちに止めることを要請します.
ご回答を2006年6月30日までにお願い申し上げます.

(理由)
 世界保健機関(WHO)の調査によると、若年女性の喫煙が世界的に急増しています。その原因として、タバコ産業が女性市場を拡大しようと、「タバコはおしゃれ」という広告に力を入れていることなどが挙げられています。WHOは、若い女性に焦点をあてたタバコ規制政策作りを急ぐべきだと指摘しています。
 国内外を問わず、多くの医学界、保健界、教育界が、子どもたちをタバコの害から守ろうと、喫煙防止教育に取り組んでいます。漫画「NANA」は、下記のごとく、この世界的な潮流に逆らうような作品であるため、日本禁煙学会は、「NANA」の関係者に強く抗議します。一定の%で死亡あるいは疾病になることが知られているのにこれを煽ることは許されません.薬害AIDS問題よりも悪質な構図です.

「NANA」の問題点
・10代〜20代の女性に大人気の作品でありながら、タバコに関するメッセージが異常に多く認めれれるため、若年女性がタバコに関心を持ちやすい。
・キャラクターの多くが喫煙するため、若者の喫煙はあたりまえ、ファッションの一つと誤解させる。
・Seven Staras、 Black Stone Cherry、 GITANESなどの実在するタバコ商品を描いている。これは、「タバコ規制枠組条約」に違反している可能性が高い。
・ 登場人物の岡崎真一(シン)が15歳であることを明記しながら、喫煙する姿を描いている。
・ 法律違反(未成年者喫煙禁止法)であると同時に、未成年者の喫煙が健康に及ぼす悪影響の深刻さをまったく認識していない描写である。
・歩きタバコ、受動喫煙などが社会問題になっているにもかかわらず、多くのキャラクターが所かまわず喫煙している。


 下記団体の宣言や表明に対して、どのようにお考えでしょうか。2006年6月30日までに至急、ご回答お願い申し上げます。


◆「健康日本21」(2000年)
最終的に目標として掲げられたのは次の4項目。
1)健康影響に関する知識を普及する
2)未成年の喫煙をなくす
3)公共の場所・職場の分煙を徹底する、効果的な分煙の普及する
4)禁煙・節煙希望者に対する禁煙支援プログラムを全市町村で受けられるようにする


社団法人 日本小児科医会 主催
子供を煙害から守る 公開講座 2003年1月25日宣誓
 

 子どもは国の宝です。その子どもたちの健康を守るために、煙害の恐ろしさを正しく、国民に理解していただく運動を進めます。
 それとともに、パパ、ママ自身の健康のためだけでなく、子どものためにもタバコのない家庭を築くことを提唱いたします。
  小児科医会禁煙推進プロジェクトメンバー 斉藤麗子


「小児期からの喫煙予防に関する提言」 1999年日本小児科学会

1、小児科医の喫煙予防活動
2、喫煙予防教育の実施
3、たばこ自動販売機の規制
4、たばこの広告禁止
5、テレビ放送中などの喫煙場面の規制


米、たばこ販売規制、10代の喫煙半減を目指す
 クリントン大統領は、たばこに含まれるニコチンを「習慣性のある薬物」に指定、10代の喫煙率を今後7年間で半減させることを目標に、自動販売機の原則的禁止や学校周辺での広告禁止など厳しい販売・広告規制策を発表した。(1996年8月23日)
たばこ規制策の骨子:
○10代の喫煙率を今後7年間で半減させる
○たばこに含有されるニコチンを習慣性薬物と指定。たばこを米食品医薬品局
(FDA)の規制対象に
○購入時に喫煙が認められている18歳以上であることを示す身分証明書の提示義務づけ
○ナイトクラブなど一部の施設を除き、自動販売機の設置禁止
○学校・遊び場から約330m以内での広告の禁止
○たばこ製品名を冠したスポーツ大会などの後援禁止
○10代向け出版物での広告は白黒の文字のみで写真などは禁止
○たばこ製品名をつけたTシャツ、帽子の禁止
○今後、半年から2年以内に段階的実施


2001年 APACT 香港たばこ宣言 (2001年10月29日制定)
 タバコ制圧のためのアジア太平洋タバコ規制対策連盟(APACT)は、タバコがアジア太平洋地域における死亡の主要な原因であると認める。
 今日のタバコ関連病の流行は、恐るべき被害と経済に対する過大な負担をもたらしている。
 すべての人、特に子供たちは、タバコのない環境で生活する権利がある。
 今日、アジアで生活しているすべての子供たちのうち、低く見積もっても、少なくとも1憶5000万人は、究極的にはタバコによって殺されることになろう。
 このタバコ関連病と、その環境と経済に対する恐るべき影響を阻止するための緊急の努力が必要である。その努力が、若者の喫煙を効果的に予防するためのものであるとしても、それは、社会全体に向けられた包括的なプログラムでなければならない。
 以上の通り、若者、健康問題の専門家、教育者、報道機関、立法者、政府職員その他の利害関係を有するグループを含むこの第6回APACTの34ヵ国からの432名の参加者は、包括的な地域タバコ制圧政策を支持し、以下の勧告を採択する。
(1)全てのタバコ広告、販売促進、スポンサーシップ、その他のタバコのマーケティング活動を禁止し、また、青少年教育および公衆衛生政策の作成の、すべての面からタバコ産業を締め出すこと。
(2)夕バコの原価の100%以上にタバコ税を増税し、この増税によって得られる十分な財源を、喫煙の防止、その他の健康関連活動の費用に割り当てること。
(3)すべての屋内の公共施設と職場において、若者その他の非喫煙者を間接喫煙にさらされないように保護すること。
(4)タバコ製品を危険な物質として規制、管理すること。
(5)若者と子供たちのために必要なものも含めて、喫煙者にとって利用しやすく、効果的な禁煙プログラムを提供すること。
(6)学校、地域の組織、マスコミを通じて生殖に対する被害も含めて健康に対する危険性についての認識を高めるよう、強力な社会教育プログラムを提供すること。
(7)強力なWHO(世界保健機関)のタバコ規制枠組み条約の成立と実施を支援すること。
(8)訴訟その他の活動を通じて、タバコ会社に過去の違法行為の責任を負わせ、また、若者のタバコ消費を減らすための立法措黄の違反と喫繧者に生じた人身被害に対する責任を負わせること。





集英社と矢沢あいさんからの連名の回答
(2006年6月27日)

日本禁煙学会
理事長 作田 学様

拝啓
 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます.
さて,6月7日にいただきました「漫画,テレビアニメ「NANA」の喫煙描写に対する抗議文と要請」に対して,編集部の考えをお伝えいたします.

 漫画「NANA」は1999年,増刊「クッキー」誌に初めて読み切りとして掲載され,翌年5月の「クッキー」創刊号から連載作品としてスタートしました.連載開始当初より読者に支持され,2006年6月現在も月刊「クッキー」誌にて連載中で,コミックス(漫画単行本)は第15巻まで刊行中です.恋に夢に戸惑う青春群像をNANAという同じ名を持つ二人の女性の友情を軸に,彼らが迎える出会いや苦難を,真摯に,時にユーモラスに描いています.

 編集部,作者共々,喫煙の有害性は十分に認識しておりますが,現代に生きる等身大の青春像を描くという作品の性格上,若者たちのリアルなライフスタイルの描写は避けて通ることができません.とはいえ,特に喫煙表現に関しては,編集部でも連載当初より細心の注意を払い,その行為を推奨するような表現は一切しないように作者と話し合っております.不特定多数が目にする駅張りの宣伝ポスター,車内吊り広告などでは喫煙シーンを一切使用しない方針でやって参りました.その方針はこれからも同様です.

 しかしこのたび,貴学会より「喫煙描写に対する抗議文と要請」を受けたことは真摯に受け止め,貴学会の活動を理解し,今後の漫画表現において編集部は作者との話し合いを再度持ち,作品に生かしていければ幸いです.以上に関しては,作者の矢沢あいも同様の考えです.

 貴学会のご活動に敬意を表し,以上をもちまして,編集部および矢沢あいからの,今回の「抗議文と要請」に対する回答とさせていただきます.

                             
敬具

2006年6月27日
株式会社 集英社
クッキー編集部
編集長 梅岡光夫
矢沢 あい



日本テレビからの回答
(2006年6月30日)

2006年6月30日
日本禁煙学会
理事長 作田 学様

日本テレビ放送網株式会社

 拝復 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 さて、貴会より「漫画・テレビアニメ「NANA」の喫煙描写に対する抗議と要請」の文書を頂戴しました件につきまして、お答え申し上げます。

 まず、この作品は「音楽バンド」という夢を縦軸に、若者たちが葛藤し、助け合い、傷つけ合いながらも成長してゆく青春群像を描いたもので、見事なまでに配置された登場人物に読者(視聴者)が感情移入し、作品の魅力に惹きこまれていくという、ドラマ性が著しく高い希有な作品であります。そして、この番組のコンセプトは、登場人物たちが様々な壁を乗り越えながら前向きに生きていく姿を通し、「ポジティブなメッセージ」を広く視聴者に伝えていくことでございます。

 この作品をテレビアニメ化するにあたり、弊社では、テレビは影響力の強いメディアであることを念頭に、特に児童および青少年への配慮は必要不可欠のものと考え、企画の段階から、喫煙に関する描写を含めた表現方法について議論を重ねて参りました。
 議論の結果、この作品における喫煙に関する描写は、ストーリー上必要不可欠なもので、割愛することは不自然であり、かつ不可能であるとの結論に至りました。
 しかしながら弊社としては、放送に際しては喫煙をことさら美化し、肯定するような取り扱いをしないことを取り決めた上で、制作しております。

 今回の貴会からのご要請は、貴重なご意見であると真摯に受けとめております。お申し入れのご趣旨は、今後の番組作り、番組の質の向上に向けての取り組みに活用させて頂きたく存じます。

 最後になりましたが、貴会の活動に対し敬意を表しますとともに、貴会のさらなるご発展を祈念いたします。

                             
敬具