植木等氏の喫煙に関する日本禁煙学会の見解
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平成19年3月30日

植木等氏の喫煙に関する日本禁煙学会の見解

日本禁煙学会理事長 作田 学
東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201
http://www.nosmoke55.jp/

 いわゆる有名人・タレントがタバコを吸ったり、喫煙関連疾患にかかったことがニュースになることがたびたびあります。日本禁煙学会は、これらの人々の喫煙習慣の有無や、どのような病気にかかったかについては、基本的にはこれらの人々のプライバシーを守ることが重要だと考えております。
 しかし、誰でもアクセスできるメディアに、これらの人々の喫煙習慣の有り無し、あるいは一般的に喫煙と関係のある病気にかかったことが報道された場合には、積極的に見解を発表することにしています。
 なぜなら、有名人の方々とタバコについての報道は、社会的に大きな影響を与え、時にタバコと健康について間違ったメッセージが振りまかれる場合が少なくないためです。とりわけ、すべてのメディアは、有名人・タレントの喫煙習慣のありなしや、かかった病気というプライバシーにかかわる報道を行う場合、事実を正確につかみ、間違いのない報道を行う厳しい責任を課されていることをしっかり認識すべきです。

(1)植木等さんは喫煙者でした。
  1991.02.06の朝日新聞夕刊の記事によりますと、
  http://www.asahi-net.or.jp/~cw5t-stu/ueki/ueki/1990asa.html
  酒はやらない、タバコは吸うということです。91年は彼の65歳のときでした。また
  http://www.sanspo.com/geino/top/gt200703/gt2007032803.html
  http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/top/obituary/45164
によりますと、タバコは20歳から始めたとのことです。そうしますと20歳から65歳、おそらく慢性閉塞性肺疾患(COPD)発症の70歳ごろまでは喫煙しておりました。45〜50年間ということになります。

(2)当然のことのようにCOPDに罹患して死亡されました。喫煙者の15〜20%がCOPDに罹患します。晩年の10年間は在宅酸素療法をなさっていたようです。喫煙をやめたにもかかわらず、慢性呼吸不全、右心不全があり、たいへん辛く、苦しい年月だったと想像できます。また、喫煙以外のCOPDになるようなお仕事(粉塵・化学物質への職業的曝露など)がなかったことは明白であります。

(3)映画でもタバコを吸う場面が非常に多く、植木氏はいわば日本の「マルボロマン*」でした。
 日本一の無責任男など、多くの映画に出演されました。この中でも、青いハイライトの箱が見える 「プロダクト プレースメント*」が露骨に出ております。映画の主役としてタバコをほとんどくわえており、いわば日本におけるマルボロマンといった役をなさったのだと思います。タバコ会社は人気者で大スターの植木さんにタバコを吸わせることで、それを真似る大人・子どもがたくさん出ることをもくろんだのです。
*(注「マルボロマン」=マルボロの販売促進のため、馬に乗ってタバコを吸う俳優。後に肺がんとなり、タバコ会社を訴えました)
*(注「プロダクト プレースメント」=劇中にわざと観客に見えるように商品を置き、宣伝をすること。映画ではたとえば、シルベスタ・スタローンが「ランボー」、「ロッキー」などで喫煙すると、フィルム一本に付き50万ドル(6千万円)支払うという取り決めが残っています)

(4)しかるに死亡記事などでは一切タバコが表に出ず、タバコを吸わなかったという虚偽の報道さえもあります。
 また、多くのマスコミ報道によれば、酒・タバコを一切やらなかったとあり、真実を伝えるべきマスコミがこぞって、タバコ隠しをやっている感があります。

(5)日本禁煙学会は、この偽りの報道に断固抗議します
 マスコミの使命は真実を報道し、それによって社会の木鐸になることであります。それをみずから隠蔽し、虚偽の報道をすることがあってはなりません。日本禁煙学会はここに、植木等氏のご冥福を祈ますとともに、マスコミの隠蔽報道に断固抗議をするものです。