読売ウィークリー9月9日号記事に対する訂正要請
2007年8月30日
読売ウィークリー編集長様
上野 玲様
NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
FAX 03-5360-6736
TEL 090-4435-9673

 このたびの読売ウィークリー9月9日号の記事はまさに、井の中の蛙、大海を知らずの伝を地でいったもので、容認しがたく、ここに訂正の記事を要請するものです。

 まず、いろいろの場所の禁煙状況を挙げ、これが健康増進法によるもので世間が過剰反応していると決めつけている。まるで日本一国だけでこの狂想曲が進行しているような言い方である。

 なぜ禁煙が必要なのか
1.発癌に関して恐ろしい事実があきらかになったこと。
 たとえば、アスベストで肺癌・肺腫瘍が生じることはどなたもご存じのことだが、何もない時に比較して、5倍の頻度で発癌する。ところが、タバコを吸っているとさらに10倍つまり、50倍の頻度で発癌することが知られている。アスベストで肺癌になった人の9割はタバコを吸っていなければ癌にはならなかったのだ。これは氷山の一角である。詳しいことを知りたければ、南山堂「禁煙学」あるいは講談社現代新書「まだ、タバコですか?」を読まれることをおすすめする。

2.受動喫煙が恐ろしい害を与えることがわかったこと。
 ニコチン、タバコの煙などと言ったものは受動喫煙では能動喫煙に比べてわずか100分の1しか吸収されない。ところが発癌物質であるベンツピレンなどは受動喫煙でも数分の1あるいはほとんど能動喫煙とおなじだけ吸収されるのだ。これはすぐには吸収されず、副流煙・呼出煙に混じって呼吸と共にゆっくりと吸収されるためと考えられる。
 また、タバコの煙は一度排出されると、壁・天井・シートなどに吸着され、ゆっくりと気化して発ガン性などをしめす。だから、タバコの臭いがすると言うことは、迷惑ではなく、危険きわまりないのだ。
子どもの乳幼児突然死症候群や気管支炎・肺炎、中耳炎、気管支喘息などはすべて受動喫煙との関係が確実となっている。
大人の肺癌、心筋梗塞なども関係が確実である。実際に受動喫煙禁止法あるいは条例が制定されたところでは、半年間で11%、1年半で27%の心筋梗塞死あるいは新入院が減少しているのだ。

3.これらのことが事実であると確認されたので、日本を除く世界中の国では受動喫煙禁止法を制定するべく走り出している。
それが端的にあらわれたのがWHOのFCTC COP2(タバコ規制枠組み条約 第2回締約国会議:6月29日〜7月6日、タイ・バンコック)である。ここでどんなことが行われたか、知る人はほとんどいない。ことの重要性に対して、まったく報道がなされなかったからである。これは報道管制としか思われない異様な事態である。
実際に日本政府の行ったことは、条文を曖昧にし、どうとでもとれるようにし、何も行わないですむようにしようとしたのだ。しかも各国の厚生省幹部が集まっている中、日本は財務省が主に発言するという異例中の異例の行動であったのである。
ここでは受動喫煙の防止に向けた各国の行うべきガイドラインがしめされ、満場一致で採択された。
ガイドラインによれば、2010年2月までに実効性のある、罰則規定付きの受動喫煙防止の法令を整備しなければならないのだ。そこでは職場・レストラン・バーなどを含むすべての閉鎖空間が禁煙となる。
これがWHOや各国がもとめている緊急のことなのだ。ことはそれほど重大であり、遅れれば遅れるほど、死者が激増すると言うことだ。
 日本も一致して採択したのだが、いまだにその条文が外務省のホームページのどこにもあらわれていない。

4.これは明らかに国民にウソを言って、実行を少しでも遅くしようという試みに異ならない。これをあばき、白日の下にさらすのは読売ウィークリーなどのマスコミの本来の使命なのではないか。
しかるに、喫煙者・禁煙者という古い対立軸を持ち出して、政府の行っている犯罪的な事実隠蔽を容認しようとしている。実際にあるのは財務省・JTのタバコを売る勢力と、タバコを売りつけられている国民の対立軸なのである。

5.マスコミはしっかりしてほしい。
まして、週刊誌のように時間をゆっくり取れる媒体は、もうすこし研究をしてほしい。
なぜ日本国内のタバコにはあいまいな健康警告表示しかなく、おなじマイルドセブンやセブンスターが外国で売られる時には肺癌の写真・死の写真・COPDの写真などが半分のスペースに示されて売られているのかをもう一度考えてほしい。
 喫煙者である記者さんと編集の方々、貴方がたもタバコの犠牲者なのだ。



以上