秦野たばこ祭りに対する要請
2007911

古谷義幸 秦野市長様                             

秦野市教育委員会様

坂間 晃 秦野伊勢原医師会長様

秦野市歯科医師会 様

秦野市健康づくり課様

秦野市健康子育て課様

NPO法人 日本禁煙学会
162-0063  東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201

理事長  作田 学
http://www.nosmoke55.jp/

  以下の4点を要請します。

1)秦野たばこ祭りは日本たばこ産業(JT)のプロモーションのお祭りになっています。JT依存をやめ,「たばこ祭り」の名称もやめるべきです。

2)子供たちには今までの歴史を踏まえタバコの害を伝える機会としなければなりません。

3)タバコで亡くなった多くの人を鎮魂するべきです。

4この機会に他の市町村に先駆けて禁煙推進都市宣言をお願い申し上げます。



 貴市におかれましてはますますご発展のことお慶び申し上げます。

 

さて、貴市のホームページを拝見致しますと、「秦野たばこ祭り」が本年は第60回ということで、以前にも増してより盛大に行われるようにお見受け致しました。

 

この祭りの起源は、貴市が以前は日本有数のタバコの葉の産地であり、その収穫を祝い、労をねぎらうことにあったと記されています。しかし近年喫煙の害が次々と明らかになり、諸外国は元より我が国でも喫煙人口が減少し葉タバコの生産量も減少、貴市におかれましても花卉栽培への転換がはかられ、既に市内のタバコ生産農家は皆無になったと聞いております。ホームページによりますと「健康づくり課」主催で、一般市民に対する禁煙指導が行われておりますが、これは喫煙の害についても充分ご理解頂いてのことと拝察致します。

 

このような、有害である葉タバコの生産が地域の発展を支えてきたということは、貴市にとりましては「負の遺産」ということになるのではないでしょうか。タバコに関連する疾患は極めて多岐にわたります。個々の患者さんについて、その原因がタバコであったかどうかを断定するのは困難ですが、年間に11万人以上の方々がタバコを原因とする疾患で亡くなり、それ以上の方々が呼吸器、循環器をはじめとする多岐にわたる疾患に苦しんでおられます。このことをお考えになったことがあるのでしょうか。ぜひ亡くなった方々の鎮魂をお願いしたいと思います。

 

 さて、このようにタバコに対する批判が強い中でJTから多額の援助を受けて「たばこ祭り」を行うのはいかがなものでしょうか。害を知らずに行った過去のタバコ生産の反省の上に立ったうえでの祭りであるならいざ知らず、多額のJTからの寄付を受け、これだけ無批判にタバコ、たばこ、煙草の文字を氾濫させることは、タバコ宣伝の祭り以外の何ものでもありません。これは時代の流れに大きく逆らう行為と思われます。まさにJTタバコ祭りといってもよいでしょう。これは我が国をふくむ世界168ヶ国が調印し、149ヶ国が締約したタバコ規制枠組み条約20102月が最終期限の第13条に完全に反するものです。

 

 また最近では公共空間の禁煙が叫ばれ、施設のみならず敷地内禁煙の施設が増え、医療機関や教育施設は敷地内禁煙が常識になっています。ところが、今回のプログラムを拝見致しましたところ、小学校でタバコの展示会を行うとあり、まさに信じられない気持ちが致します。教育施設内にはタバコはもちろんタバコを許容する可能性のあるものは認めないというのが、タバコを吸わない世代を作るためには重要なことで、これは非常識以外のなにものでもありません。これはタバコ規制枠組み条約・第12条に全く相容れないものです。

むしろ次世代を担う子供たちに、タバコの害を知らせる機会としなければなりません。

 

 来年からは、FCTCの精神にのっとり「たばこ祭り」の名称は変更され、JTからの寄付は明確にお断り下さいますようお願い致します。このような名称で祭りを行っていたことで、これからの脱たばこ社会の中で秦野市民が肩身の狭い思いをすることが無いようにお願い致します。

 

 

(注 タバコ規制枠組み条約(FCTC) 第1213条)

第十二条 教育、情報の伝達、訓練及び啓発

締約国は、適当な場合にはすべての利用可能な情報の伝達のための手段を用いて、タバコの規制に関連する問題についての啓発を促進し及び強化する。このため、締約国は、次のことを促進するための効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を採択し及び実施する。

a)タバコの消費及びタバコの煙にさらされることによる健康に対する危険(習慣性を含む。)についての教育及び啓発のための効果的かつ包括的なプログラムへの広範な参加の機会の提供

b)タバコの消費及びタバコの煙にさらされることによる健康に対する危険並びに第十四条2の規定によりタバコの使用の中止及びタバコのない生活様式がもたらす利益についての啓発

c)タバコ産業に関する広範な情報であってこの条約の目的に関連するものの自国の国内法に基づく公開

d)保健に従事する者、地域社会のために働く者、社会福祉活動に従事する者、報道に従事する者、教育者、意思決定を行う者、行政官その他の関係者に対する、タバコの規制に関する効果的かつ適当な訓練又は啓発のためのプログラム

e)タバコの規制のための複数の部門にわたるプログラム及び戦略の策定及び実施におけるタバコ産業と関係を有しない公的な及び民間の団体並びに非政府機関の啓発及び参加

f)タバコの生産及び消費が健康、経済及び環境に及ぼす悪影響に関する情報についての啓発及びその情報の取得の機会の提供

 

第十三条 タバコの広告、販売促進及び後援

1 締約国は、広告、販売促進及び後援の包括的な禁止がタバコ製品の消費を減少させるであろうことを認識する。

2 締約国は、自国の憲法又は憲法上の原則に従い、あらゆるタバコの広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を行う。この包括的な禁止には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を含める。この点に関し、締約国は、この条約が自国について効力を生じた後五年以内に、適当な立法上、執行上、行政上又は他の措置をとり、及び第二十一条の規定に従って報告する。(注 20102月までに行う)

3 自国の憲法又は憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国は、あらゆるタバコの広告、販売促進及び後援に制限を課する。この制限には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える効果を有する広告、販売促進及び後援の制限又は包括的な禁止を含める。この点に関し、締約国は、適当な立法上、執行上、行政上又は他の適当な措置をとり、及び第二十一条の規定に従って報告する。

4 締約国は、憲法又は憲法上の原則に従い、少なくとも次のことを行う。

a)虚偽の、誤認させる若しくは詐欺的な手段又はタバコ製品の特性、健康への影響、危険若しくは排出物について誤った印象を生ずるおそれのある手段を用いることによってタバコ製品の販売を促進するあらゆる形態のタバコの広告、販売促進及び後援を禁止すること。

b)あらゆるタバコの広告並びに適当な場合にはタバコの販売促進及び後援に当たり健康に関する警告若しくは情報又は他の適当な警告若しくは情報を付することを要求すること。

c)公衆によるタバコ製品の購入を奨励する直接又は間接の奨励措置の利用を制限すること。

d)包括的な禁止を行っていない場合には、まだ禁止されていない広告、販売促進及び後援へのタバコ産業による支出について関連する政府当局に対し開示することを要求すること。当該政府当局は、国内法に従い、当該支出の額を公衆に開示すること及び第二十一条の規定に従い締約国会議に開示することを決定することができる。

e)ラジオ、テレビジョン、印刷媒体及び適当な場合には他の媒体(例えば、インターネット)におけるタバコの広告、販売促進及び後援について、五年以内に、包括的な禁止を行い、又は自国の憲法若しくは憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国の場合には、制限すること。

f)国際的な催し、活動又はそれらの参加者に対するタバコの後援を禁止し、又は自国の憲法若しくは憲法上の原則のために禁止する状況にない締約国の場合には、制限すること。

5 締約国は、4に規定する義務を超える措置を実施することが奨励される。

6 締約国は、国境を越えて行われる広告の廃止を促進するために必要な技術及び他の手段の開発について協力する。

7 特定の形態のタバコの広告、販売促進及び後援を禁止している締約国は、自国の国内法に従い、自国の領域に入る当該形態の国境を越えるタバコの広告、販売促進及び後援を禁止する主権的権利並びに自国の領域における国内の広告、販売促進及び後援について適用する制裁と同等の制裁を科する主権的権利を有する。この7の規定は、いかなる制裁をも科することができることを認め又は承認するものではない。

8 締約国は、国境を越えて行われるタバコの広告、販売促進及び後援の包括的な禁止のために国際的な協力を必要とする適当な措置を定める議定書の作成について検討する。

 

(私たち日本禁煙学会は、個人会員約1300名の、医師・弁護士など多くの職種からなる会で喫煙の害をなくすために日夜働いております。)