2012年 4月17日送付・掲載

【日本国政府への要請】
JT・JTIは、プレインパッケージで人々の健康を守ろうとしている
オーストラリア政府を訴えるべきではない


NPO法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学

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2012年4月17日
総理大臣 野田佳彦様
財務大臣 安住 淳様
NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学

日本国政府ならびにその配下にあるJT・JTIはプレインパッケージで人々の健康を守ろうとしているオーストラリア政府を訴えるべきではありません。

 JTの不面目な行動は、日本の恥・悪評になります。なぜならJapan tobaccoと言う名前、政府が50%以上の株を持ってコントロールしている事実があるからです。
1. 道義上、原理原則から(as a matter of principle) JTはその製品が顧客に疾病と死をもたらすことがあってはなりません。
2. 日本政府がFCTC11条とガイドラインを承認している以上、他国がガイドラインを誠実に実行していることで裁判に持ち込むなどということは常識(common sense)では考えられません。




 日本国政府は2008年にFCTCの第11条ガイドラインに賛成いたしました。
(FCTC: WHO Framework Convention on Tobacco Control: タバコの規制に関する世界保健機関枠組み条約)
ガイドラインは法的拘束力のない法的文書ですが、コンセンサス方式により採択された、an instrument related to the treaty であります。ということは「FCTC条約は、FCTC ガイドラインにより、かつその趣旨及び目的に照らして、与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈し、履行するものであります。」これを実行しないことはウィーン条約31条ならびに日本国憲法98条違反です。
 さて、第11条ガイドラインはタバコの包装およびラベルについて規定しています。これはそもそも条約第11条ですべての国は3年以内【2008年2月】に、タバコ製品の包装およびラベルについての効果的な措置を採択及び実行するとありました。
 そして、ガイドラインによれば、世界的に見て、多くの人々が喫煙及びタバコの煙にさらされる事による疾病罹患・若年死について、誤解または過小評価しているとして、健康警告をデザインする上で、視認性を高める、画像を含んだ大きな警告にすると効果的で、とくに小児・若年者に対してとくに有効としています。
そして、プレインパッケージについて46項で下記のように推奨しています。
「締約国は標準的な色とデザインによって表示される銘柄・製品名のほかには、ロゴ・色・ブランドイ メージ・販促的な情報を包装に使用することを制限あるいは禁止し、簡略な包装(plain packaging)を促す手段を受け入れることを考慮する。これにより、健康に関する警告の可視性および効果を高めることができる。健康に関する警告から注意をそらし、特定の製品が他より安全であると暗示するような商業的なデザイン技術による包装を防ぐためである。」
 しかるに、オーストラリア政府がその国民をタバコによる健康被害から守ろうとしておこなっているプレインパッケージに対し、JT・JTIは商業的な損害を訴えており、2012年4月17日に最初の聴取がキャンベラの高裁でおこなわれます。
 しかし、タバコが売れなくなることによる損害を請求するということは、FCTC条約に真っ向から反対することであります。FCTCは、タバコは死亡、疾病および障害をおこすことが科学的証拠により明らかにされていること、あらゆる手段を使って、タバコの消費を減らすことがその目的だからです。
 ましてや、日本国政府が50.02%もの株式を所有しているJT(JTI)がオーストラリア政府を訴えることは、外国から見ると日本国政府がオーストラリア政府を訴えるのと同じ事であります。これは自国民を保護しようという当然の行為に対する妨害です。そればかりではなく、オーストラリアでのJTIのシェアはウインストンなどごく少ないのです。

これはまさにWHOが今年の世界禁煙デーのスローガンにしている
“Stop Tobacco Industry Interference” の通りです。

 ただちに、日本国政府はJTに命じて訴訟を取り下げさせるべきであります。
以上