2012年 5月12日送付

「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針の改正(案)」に対する意見
厚労省の「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針の改正(案)」に対する意見の募集に以下を送りました。
(案の公示日 2012年04月13日 意見・情報受付開始日 2012年04月14日 意見・情報受付締切日 2012年05月13日)

日本禁煙学会 理事
松崎道幸

「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針の改正(案)」に対する意見を申し上げます。

言うまでもなく、日本国民の健康を脅かしている疾病は、ガン、循環器疾患、呼吸器疾患そして、最近健康寿命短縮の大きな要因であることが判明した精神疾患であります。

これらの疾病をもたらしている健康危険因子を科学的調査によって同定し、適切な対策を講ずることが、実効のある健康増進のために必要なことは、言うまでもありません。

わが国で行われた研究調査のエビデンスを紹介し、喫煙対策が上記の諸疾患の一次予防上喫緊の課題であることを申し述べたいと存じます。
  1. 日本人男性の寿命短縮に関係する15種類の因子中、喫煙が最大の寿命短縮因子であった。第二位の高血圧の2倍の影響だった。(Ikeda他.plosmedicine.2012)。
  2. NIPPON DATA 90(30-70才男性2752名15年追跡)研究の結果、日本人男性の脳卒中および心臓疾患死の最大危険因子が喫煙であることが判明した。ちなみに発症寄与率は喫煙52%に対して、メタボリックシンドロームは9%であり、喫煙対策がメタボリックシンドローム対策よりも優先して実践されなければならないことが証明された。(Takashima他.BMC Public Health. 2010)
  3. 日本人男性のガン死の原因の第一位は喫煙(35%)で、第二位の感染症(19%)、第三位のアルコール9%を大幅に上回った(Inoue他.Ann Oncol. 2011)。
  4. 日本の男性労働者の喫煙者のうつ病罹患率(6.5%)は非喫煙者(2.7%)の2.5倍と有意に高率だった。(Takeuchi他.J Occup Health. 2004)
  5. 非喫煙者であっても職場で受動喫煙のある場合、うつ状態を呈するリスクが63%増加する(Nakata他.Prev Med. 2008)。
  6. 禁煙するとうつ状態スコアが有意に半減し、メンタルヘルスが改善する(Mino他.Psychiatry Clin Neurosci. 2000)。
以上、日本国内における最近の疫学調査データを総合すると、ガン予防、循環器疾患予防、メンタルヘルス改善のためには、能動喫煙の低減と受動喫煙の解消が、他の予防的施策に優先して実行される必要のある課題であることが明白になっています。その意味で、喫煙率の低減目標と、受動喫煙完全解消を目的とした国の施策は大歓迎であるとともに、より喫煙対策を強固に推進することを期待いたします。
以上