2012年 8月 7日

映画の喫煙シーンについての要望

2012年8月7日 要望書(PDF版)
映画の喫煙シーンについての要望(217KB、3ページ)
映画の喫煙シーンについての要望



参考資料
(注1−2)がん対策推進基本計画(202KB、6ページ)
(注1−2)がん対策推進基本計画


(注1−3)第2次健康日本21(厚生労働省告示第四百三十号)
(306KB、5ページ)
(注1−3)第2次健康日本21(厚生労働省告示第四百三十号)



(注1−4)第2次健康日本21の推進に関する参考資料
(871KB、10ページ)
(注1−4)第2次健康日本21の推進に関する参考資料




映画倫理委員会 委員長 大木圭之介様
文部科学大臣  平野博文様
厚生労働大臣  小宮山洋子様
特定非営利活動法人日本禁煙学会
理事長 作田学
未成年者の喫煙シーンについて(要望)

 映画界の健全なる発展のために日頃から努力されていることに心から敬意を表します。

 私たちは、広く国民を対象に、タバコ規制、Tobacco Control に必要な科学的知識・技術の発展と普及に資することで、社会全体としての健康保持に寄与することをめざして取り組んでいる団体です。
 映画倫理委員会は概要の中で、「特に青少年に対しては、映画の与える影響を重視して、作品を主題・題材とその表現の仕方に応じ、年齢別に4段階に区分し、作品によっては青少年の劇場への入場を制限したり、保護者の助言・指導をうながすなどの措置を講じております。」と述べています。
 そして、配慮すべき法令の中で、法の精神に配慮するものとして、一番目に「未成年者喫煙禁止法」を掲げています。
 
 タバコは世界的に見ても、2005年に発効したFCTC(タバコ規制枠組条約・日本は2004年6月批准)で規制強化が進み、そのことにより映画等でも条約に則った対応がなされているところです。国内では、健康増進法や一部の自治体での受動喫煙防止条例法などの制定により、タバコの害に対する周知とともにその防止の強化が図られているところです。
 そのような社会情勢の中で、今年になって上映された作品の中には、青少年に対してタバコの認識を誤って伝える問題のある作品が続いています。それらは未成年者の喫煙の問題であり、受動喫煙に対する認識の欠如であり、タバコ会社の宣伝であります。このことは明確なFCTCに対する遵守義務違反なのです。
 
 特に問題としてあげられる現在上映中の作品「苦役列車」では、役の上で19歳と名乗る主役を含めた3人(男2人、女1人)が堂々と喫煙しています。中でも主役の森山未来(彼は実年齢では未成年ではありませんが。)はほとんどのシーンで喫煙するというタバコの宣伝以外のなにものでもないという扱いでした。
 また、「愛と誠」では、高校の教室内がタバコの煙と吸い殻で満たされた異常な光景がなんども映し出されました。まるで高校での喫煙を勧めているかのようでした。吸っていたのは未成年ではないと思いますが、役の上では高校生なのです。
 
 ところで、未成年者の喫煙のキッカケが映画やテレビの影響が大きいということは各種の調査で明らかになっています。その意味からも未成年の喫煙行動を助長するような映画は重大な問題であります。
 アメリカでは、「2007年5月10日から映画の中で喫煙を美化したり、歴史的背景やストーリー上必要もないのに喫煙シーンが多ければ“R指定”となる。」という新基準を米映画協会が打ち出しました。また、2010年8月には、「映画の喫煙シーンに影響されて喫煙を始める未成年者が多いことから、米疾病対策センター(CDC)は映画への規制強化を求める報告書を発表しました。具体的には、喫煙シーンを含む映画の前にタバコの害を説く広告を上映することや、映画制作者がタバコ会社から見返りを得ていないことを証明する措置などを導入することを提案していまする。また、報告書はタバコの場面がある映画は成人向けに指定すべきだとも述べている。」と報道されています。(読売新聞)また、インドやタイなどでは実際に喫煙場面は厳しく制限されています。

 喫煙が人の命を縮め、医療費負担の増大などの大きな社会的損失の一因となっていることは明らかです。また、映画界においても、タバコが原因と思われる病気で多くの俳優など関係者が寿命を全うせず、亡くなられています。長く映画界において活躍していただきたいにもかかわらず早世してしまうことは全く不幸なことと言わざるをえません。

 以上のようなことから、映画界の健全なる発展と未成年者をタバコの害から守るために以下のことを要望いたします。
  1. 未成年者及び妊産婦には喫煙させないこと。すなわち、役者本人が未成年者及び妊産婦である場合はもちろん、役者が成人であったとしても、登場人物が未成年者及び妊産婦である場合は喫煙させないこと。(注1)(注1−2,3,4)

  2. 喫煙シーンがある場面には、未成年者及び妊産婦の健康を受動喫煙の危害から守る観点から、未成年者及び妊婦は同席させない場面とすべきこと。(注1)(注1−2,3,4)

  3. タバコ会社から援助を受けることはFCTC違反です。演出上、喫煙シーンが必要な場合は「制作会社も監督や役者もタバコ会社からの援助は受けていない」との表明をエンディング等ですること。また、映画「ヘルタースケルター」などのように背景にJTの自動販売機を並べて映すことは明らかなFCTC違反です。(注2)(注3)(注4)

  4. 喫煙シーンが入る場合は、未成年者への影響を考慮し、R指定とすること。


(注1)2012年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」及び同年6月に厚生労働大臣告示された「第2次健康日本21」では、タバコの数値目標として、未成年者の喫煙をなくす・妊産婦の喫煙をなくす・受動喫煙をなくすとしています。
(注1−2)がん対策推進基本計画
(注1−3)第2次健康日本21(厚生労働省告示第四百三十号)
(注1−4)第2次健康日本21の推進に関する参考資料

(注2)WHOタバコ規制枠組み条約第13条
(e)ラジオ、テレビジョン、印刷媒体及び適当な場合には他の媒体(例えば、インターネット)におけるタバコの広告、販売促進及び後援について、五年以内に、包括的な禁止を行い、又は自国の憲法若しくは憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国の場合には、制限すること。

(注3) WHOタバコ規制枠組み条約第13条ガイドライン
締約国は娯楽メディア作品におけるタバコの表現に関する特別な対策を実行すること。すなわち、タバコを描くことによる利益供与を受けていないことを証明させる、タバコのブランドやそれを連想させる表現を禁止する、上映の前の反タバコ広告義務化、タバコの表現を考慮した作品の格付け、分類システムを作ることなどである。

(注4) FCTCポケットブック 日本禁煙学会発行 2011年5月