2012年 2月23日掲載 2013年10月8日更新

オリンピックと禁煙

オリンピック開催地には受動喫煙防止条例が必要となっています。東京以外の招致都市にはすでに受動喫煙防止法があります。

(松崎道幸・翻訳)
健康なライフスタイル推進に関する
世界保健機関と国際オリンピック委員会の合意

スポーツは生活習慣病を減らす
ニュースリリース
2010年7月21日ローザンヌ


 世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は、すべての人々に運動とスポーツを奨励し、タバコのないオリンピックを実現し、子どもの肥満を予防するために健康的なライフスタイルを奨励することを共同で行う合意に達した。
 本日ローザンヌにおいて署名された合意内容の覚書にあるように、WHOとIOCは国際レベルでも、国内レベルでも、心臓病、ガン、糖尿病などの生活習慣病のリスクを減らすための活動と政策を推進するために協力することになった。
 WHO事務総長マーガレット・チャン氏はこう語った。「このIOCとの合意は、全世界の最大の死亡原因となっている疾患を減らす活動を強化するものである。21世紀における世界の持続的な発展を達成するためには、これらの疾患を減らす対策が不可欠である。」
 生活習慣病は、世界で毎年3500万人の命を奪っている。うち900万人は60才以下の死亡である。運動不足は世界で4番目の死亡リスク因子であり、毎年190万人の死亡原因となっている。

健康的なライフスタイルの推進

「健康的なライフスタイルと草の根のスポーツ運動を広げることはIOCとWHOの共通の目標であり、本日の合意は、この2機関が行っている様々な先導活動の間に相乗効果を生むことになろう。」とジャック・ロゲIOC会長はのべた。「すべての年代の生活習慣病を減らす活動をすべての人々が協力して実行できるようにする事がこの合意の本旨だ。」
60才以前の死亡の約90%は発展途上国で発生しており、タバコ使用、健康的でない食習慣、運動不足をなくすることで予防できる。
生活習慣病による死亡は、世界中のすべての地域で増えつつある。もし適切な対策が講じられなければ、2015年には4120万人が死亡すると推定されている。

【この情報に関する問い合わせ先】
Fadela Chaib
WHO Communications Officer
Telephone: +41 22 791 32 28
Mobile: +41 79 475 55 56
Email: chaibf@who.int
Timothy Armstrong
Coordinator, Department of Chronic Diseases and Health Promotion
Telephone: +41 22 971 1274
Mobile +41 79 445 2026
Email: armstrongt@who.int
以上
【原文】は健康なライフスタイル推進に関する世界保健機関と国際オリンピック委員会の合意PDF版を参照下さい。



(松崎道幸・翻訳)
タバコのないオリンピックについての5問5答
世界保健機関中国代表部
タバコのないオリンピック実現の意義と背景

  • 1988年カルガリー大会以後、IOCの方針としてオリンピックの禁煙原則が貫かれている
  • 北京大会は、2005年のWHOタバコ規制国際枠組み条約(FCTC)の発効後初めての夏季大会である。
  • ブルームバーグ・イニシアティブおよびタバコフリーキッズキャンペーン、国際肺基金、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校公衆衛生学部、米国疾病予防センターなどの協力により、オリンピック北京大会の禁煙を後押しされた。WHOタバコフリーイニシアティブは、WHO加盟国とブルームバーグ・イニシアティブ等によりサポートされている。
 問1:WHOはタバコのないオリンピック北京大会にどのような立場をとっているのですか?

 タバコのないオリンピック大会は、中国にとって素晴らしいきっかけとなります。中国のいくつかの都市では、北京にならって、公共施設と職場を禁煙にする条例を立案しています。
 タバコの広告を制限する法律も準備されています。都市段階でタバコ広告を規制する条例も作られました(瀋陽、上海、青島、秦皇島、天津など)。
 このような運動を見ると、中国でもタバコの害をなくすことが可能であるという希望を抱くことができます。
 また、FCTCの実践に対する中国の国際貢献を証明することにつながります。

 問2:オリンピック後も、中国の禁煙化政策は続くのでしょうか?

 国際社会に対する約束であるFCTC批准を通じて、中国は、すでにタバコの流行を防ぐことを国の方針と定めたのです。数多くの地方都市レベルでタバコ規制対策が採択され、実施されることが、すべての中国国民をタバコから守り健康を増進するための国としての法律を作る準備につながるものと確信します。
 世界各国の経験で、ひとたびタバコの煙のない環境が法律によって実現されたなら、誰も後戻りすることを望まない事が証明されています。
 オリンピックをきっかけにして北京でタバコの広告が禁止され公共の場が禁煙にされると、すべての中国国民がそのような状態を享受したいと思うようになり、オリンピックが大きな健康遺産を遺すきっかけになるでしょう。


 問3:本当にタバコの煙のないオリンピックが実現できるのですか?

 できます。
 大会の会場内はすべて禁煙とする決まりが準備されています。それだけでなく、タバコのないオリンピックのための新しい基準も用意されます。
 会場へライターを持ち込むことは禁止されます。
 また、会場周辺も禁煙とされます。
 大会期間中、ショートメッセージテキスト等を活用して、禁煙のメッセージを拡散すると言う新たな試みも実施されることになっています。IOCも北京組織委員会もタバコのないオリンピックを開催する方針を決めています。

 オリンピックのマスコットキャラクターのジンジン(→)もタバコのないオリンピックのメッセージ普及に協力しているのは喜ばしいことです。
 タバコの害を述べて、人々に禁煙を訴える記事を掲載した地方新聞もあります。


 問4:WHOはオリンピックの禁煙化にどのように取り組んできたのですか?

 2006年、WHOはタバコのないオリンピックを実現するためのワークショップを開催しました。
 シドニーオリンピック禁煙化を担当したWHOのコンサルタントが、中国本土の大会開催地の全都市を訪れて、シドニーオリンピックの経験や教訓を説明しました。
 WHOは本年5月1日に施行される北京市禁煙条例の草案準備作業に協力しました。WHO受動喫煙防止対策勧告(WHO Protection from Exposure to Second Hand Smoke Policy Recommendations 日本語訳→http://www.nosmoke55.jp/data/0706who_shs_matuzaki.html)およびFCTC第8条施行ガイドライン(Guidelines for the Implementation of the WHO Framework Convention on Tobacco Control Article 8 日本語訳→http://www.nosmoke55.jp/data/0707cop2.html)の内容に沿ってアドバイスを行いました。
 WHOはまた、北京市組織委員会の要請にこたえて、大会を真の意味で禁煙にするための対策について支援を行いました。首脳レベルで、WHOがIOCに対してタバコのないオリンピックの定義についての技術的支援を行いました。禁煙化の徹底に当たり、その必要性と正しい方向のための指針としてFCTCが活用されました。中国は2005年にFCTCを調印しました。これまでに160カ国が批准しています。


 問5:WHOはタバコ問題にどう取り組んでいるのですか?

 WHOのMPOWERパッケージをご覧ください。これはタバコの蔓延と甚大な被害を防ぐための6分野の対策を記したものです。M:タバコ使用率とタバコ対策のモニター、P:受動喫煙から人々をプロテクトする、O:タバコ使用をやめる援助をオファーする、W:タバコの害を警告(ワーニング)する、E:タバコの広告、販促、スポンサー活動禁止の徹底(エンフォースメント)、R :タバコ税増税(レイズ)。WHOはこれらの政策群の実施に関して中国政府を援助しています。


中国におけるタバコの現状
  • 15-69才男性の喫煙率57.4%
  • 15-69才女性の喫煙率2.6%
  • 能動喫煙者 3億5千万人
  • 受動喫煙者 5億4千万人
  • タバコによる死亡 年間100万人
  • タバコによる経済損害 年間50億ドル
  • FCTC批准2005年。2009年1月までに第11条(タバコのパッケージ・ラベル、有害警告表示)、2011年1月までに第8条(受動喫煙防止)の実施を誓約。
(以下略)
【原文】はPDF版を参照下さい。


【関連報道】 「五輪は受動喫煙防止の流れ」
条例化せねば招致ムリ ライバルは整備済み
http://www.eonet.ne.jp/~tobaccofree/tokyonews120317.jpg

(東京新聞2012年3月17日記事)
オリンピック立候補都市と受動喫煙防止法の有無
 (○:落選時防止法あり ×:なし 赤字:開催都市)
開催年 候補都市 受動喫煙防止法
2020年 東京 なし(本日現在)
マドリード 2011年1月施行
イスタンブール 2009年7月施行
2016年 リオデジャネイロ 2009年8月施行
シカゴ 2006年1月施行
× 東京 なし
マドリード 不完全な受動喫煙防止法
(スペインモデルと言われた)
2012年 ロンドン 2007年7月施行
× パリ 2008年1月施行(落選後)
× マドリード なし
ニューヨーク 2003年7月施行
× モスクワ なし
2008年 北京 2008年5月施行
トロント 2001年6月施行
× パリ 2008年1月施行(落選後)
× イスタンブール なし
× 大阪 なし



オリンピックと禁煙ファクトシート

オリンピックと禁煙ファクトシート
PDFファイル12ページ、1497KB



健康なライフスタイル推進に関する世界保健機関と
国際オリンピック委員会の合意PDF版

健康なライフスタイル推進に関する世界保健機関と国際オリンピック委員会の合意
健康なライフスタイル推進に関する世界保健機関と国際オリンピック委員会の合意 スポーツは生活習慣病を減らす ニュースリリース 2010年7月21日ローザンヌ(松崎道幸・翻訳)PDFファイル145KB


タバコのないオリンピックについての5問5答
タバコのないオリンピックについての5問5答 世界保健機関中国代表部 タバコのないオリンピック実現の意義と背景(松崎道幸・翻訳)
タバコのないオリンピックについての5問5答 世界保健機関中国代表部 タバコのないオリンピック実現の意義と背景(松崎道幸・翻訳)PDFファイル229KB


ミレニアム開発目標に対する
国際オリンピック委員会の提言

ミレニアム開発目標に対する国際オリンピック委員会の提言
ミレニアム開発目標に対する国際オリンピック委員会の提言
コミュニティに貢献するスポーツ 2010年9月 国際協力開発部門

(17ページ、5.ヘルス・プロモーション スポーツは健康なライフスタイルのカギ 訳:松崎道幸)(PDFファイル154KB)
※元の英文の文書は下記



The Contribution of the International
Olympic Committee
to the Millennium Development Goals
(ミレニアム開発目標に対する
国際オリンピック委員会の提言)

※一部翻訳は上記
ミレニアム開発目標に対する国際オリンピック委員会の提言(英文)
The Contribution of the International Olympic Committee
to the Millennium Development Goals.Sport at the Service of our Community. September 2010
International Cooperation and Development Department

(PDFファイル1,486KB)