禁煙会誌 第2巻第5号 2007年6月1日


目次



《原著論文》 禁煙における短期間のストレス状態の変化
矢野直子
《原著論文》 加濃式社会的ニコチン依存度調査票による女子学生のタバコに対する意識調査(2006年度)
栗岡成人
《WAT特集》 WALK AGAINST TOBACCO 2006 WEEK 4 REVISITED
Mark Gibbens
《禁煙外来から》 診療録(4) 成人5例 未成年4例
 
《記 録》 日本禁煙学会の対外活動記録(2007年4・5月)
日本禁煙学会雑誌第2巻第5号 2007年6月

《原著論文》

禁煙における短期間のストレス状態の変化
日本赤十字社医療センター 健康管理センター 矢野 直子

キーワード:禁煙、ストレス、ストレスチェックリスト、ニコチン依存症


目的
 2006年6月より禁煙治療に保険が適用され、喫煙は「ニコチン依存症」であり、嗜好でなく病気という認識のもと、指導の面でも禁煙を勧めやすくなった。しかし、喫煙者の多くは、「タバコはストレス解消」「禁煙したらストレスがたまる」「仕事のストレスが強いから今は禁煙できない」とストレスを楯に禁煙決意に踏み込めない場合が多い。「禁煙したらストレスがたまる」のは、事実なのか。喫煙者が禁煙を決意し、禁煙を継続した場合、どのようなストレス変化があるのだろうか。
 ストレス状態を客観的に捉える手法として、生理学的手法や心理学的ないくつかの客観的手法があるが、日赤医療センター健康管理センターでは、人間ドック受診者のストレスレベル評価、心身症のスクリーニングとして、ストレスチェックリスト(以下SCL)表1を用いている。これは、1980年に桂により、ストレス状態で表れてくる自律神経失調症状を中心に作成されたものである。村上ら1)は、健常人のストレス状態に関する研究で、首都圏に在住する健常人293人を対象としてSCLによりストレス状態を分析した結果、主観的ストレス度の増加と主観的健康状態の悪化、身体的・情緒的愁訴の数とストレス度の増加のいずれにおいても相関がみられたと報告している。また。同様の傾向は、折津2)3)をはじめ、多数報告されており、健常人がストレス状態によって、身体の不全感、違和感を自覚し、自律神経失調状態に陥っている時期を、心身症になる前のpre-stageとして認識するためには、ストレスと心身相関に対する認知がなさなければならず、この自己評定が有用であるとしている。
 このSCLを用い、2005年に1日ドック受診者を対象に我々が行なった調査では、喫煙者は非喫煙者に比べストレス感を感じているものが多く、SCLの平均点数も、非喫煙者、過去喫煙者に比べ有意に高かった4)。では、禁煙治療に保険が適用される3ヶ月間では、ストレス感はどのような変化があるのだろうか。今回、禁煙時と禁煙継続3ヶ月目のストレス状態の変化をSCLとアンケートで比較調査したので、報告する。

対象者
 2006年7、8月の禁煙外来初診者52名のうち、治療中の精神疾患がある者は除き、保険診療の禁煙プログラムに沿って5回受診し、禁煙を継続できた35名。対象者の背景は、男女比20名:15名、平均年齢52.5歳:42.3歳、TDSテスト7.5点:7.7点、ブリンクマン指数1055:481、過去禁煙歴1.1回:0.8回である。現在加療中の疾患があるものは、35名中10名、うち癌の術後管理中が3名である。
 禁煙の目的は、「自分の健康のため」が20名(57%)、「自分と家族の健康のため」が5名(14%)、「加療中の疾患のため」が3名(8.6%)であった。禁煙のきっかけは、「禁煙治療に保険適用」が11名(31%)、「保険適用と家族、知人の勧め」が8名(23%)、「医師の勧め」「家族の癌」がそれぞれ2名(5.7%)であった。

方法
 初診時と3ヶ月目の受診時に対象者に承諾を得て、SCLと、アンケート表2で調査した。SCLの項目と判断基準は表1に示す。6点以上が軽いストレス状態で要注意、11点以上が中等度のストレス状態で、場合により専門家のカウンセリングが必要、21点以上は重度のストレス状態で要治療となっている。なお、男性より女性のほうが高い傾向があるとされている。アンケートでは、日常のストレスの有無、禁煙または禁煙継続をストレスと感じるか、3ヶ月間でのストレス変化、タバコはストレス解消の手段であるかなどの項目と、禁煙成功の感想から検討した。それぞれの変化については、Wilcoxonの符号付順位和検定で評価した。また、禁煙継続の有無は、一酸化炭素呼気テストで必ず確認した。今回の調査では、「継続している」と自己申告された方の呼気中一酸化炭素は、0~6ppmであった。
表1.ストレスチェックリスト(SCL)
表1.ストレスチェックリスト(SCL)
表2.禁煙とストレスに関するアンケート
表2.禁煙とストレスに関するアンケート
結果
 
SCLの平均点数は、両時期同点だった2人を除き、33人で改善をみた。点数は、男性が9.5から2.7と、女性は12.0から4.1と、男性は軽いストレス症状から、女性は本格的ストレス症状から、各々正常まで改善した。また、35名全体の変化について評価したところ、p<0.001と変化に有意差がみられた。図1
 初診時に11点以上すなわち中等度ストレス状態または重度ストレス状態であったものが、5点以下すなわち正常範囲になったのは10名で、全体の約30%を占めた。
 また、初診時にあり、3ヶ月時にチェックされなかったSCL、すなわち改善されたとされる項目を多い順でみてみると、目の疲れが16名、何かするとすぐ疲れるが14名、立ちくらみ12名、背中や腰の痛みと、朝気持ち良く起きられないがそれぞれ11名であった。
 両時期とも、最も強いストレス原因として、仕事や職場の人間関係(初診時16人→3ヶ月時20人)、家族関係(10人→9人)、家事(2人→2人)をあげており、両時期の変化はさほどないものの、日常のストレス感を強く感じている者は、初診時の9名から3ヶ月時点で1名に減少した。日常のストレス感は禁煙により改善している図2。(p=0.033)
 この3ヶ月間で最も強くストレスを感じた時期については、禁煙開始から2週間の間とあげた者が16人(46.6%)、ついで禁煙前が7人(20%)と多く、2ヶ月時、3ヶ月時現在と答えた者は、2名ずつであった。では、禁煙することをストレスと感じるかという問いに、初診時29人(83%)の者が「はい」と答え、また18人と半数以上の者が「禁煙することは不安だ」と答えた。そして、3ヶ月時、今後の禁煙継続はストレスと感じた者は3人と大幅に減少し、22人(62.8%)が「ストレスでない」と答えた(p<0.001)。
図3
 次に、“タバコはストレス解消手段”であるかどうか、初診時27人(77%)が「はい」と答えていたが、3ヶ月時点で16人と減少し、「いいえ」という意見が1人から13人に増加した。(p=0.014)図4
 3ヶ月時の自由感想としては、咳・痰などの改善、食欲・体調良好という身体的メリット、お金がたまるという経済的メリット、その他は圧倒的に精神的メリットを上げた。「喫煙場所をさがすストレスがなくなった」「自分に自信が出来た」との回答が多く、「攻撃的な思考が無くなった」「やさしく対応できるようになった」など個人思考、対人関係の変化を上げた者が5名いた。「何でも悪く思わないで明るく行動しよう」「考え方が気楽になった」「落ち着いて考えられる」「ハッピー」「子どもがかわいく感じられる」など肯定的な意見が占めた。初診時の自分のチェックしたSCLの項目の多さを見て驚く受診者も多く、自らの振り返りになったようだ。

考察
 
禁煙後3ヶ月という短期間でも、ストレス増強の傾向は少なく、むしろ身体症状の改善、ストレス感からの開放、満足感と、心身ともにプラスの効果が期待できる。これまでの研究では、禁煙に成功した者について、GHQ-30という質問紙を使った禁煙後6ヶ月、1年間、2年間の追跡調査で、精神健康が改善したという報告5)がある。今回の研究では、これらの研究と同じく、さらに3ヶ月という短期間でも禁煙によりストレスが減少することを裏付ける結果となった。
 長年の喫煙は、セロトニンなどの神経伝達物質の分泌異常を引き起こし、個人に適したニコチン血中濃度により精神的な快楽を得るが、基本的には本来のリラックス物質が足りない状態が続いているため、精神状態の不安定さをまねく6)といわれている。このため、今回の調査でも、禁煙前のストレス感が比較的強い結果になった。特に女性の場合、更年期による影響を考慮する必要があるが、今回の調査では、対象者の年齢層が比較的若く、大きな影響はないと考えると、例え喫煙年数が短くとも、喫煙がストレスフルな状態にしていると考えられる。タバコはストレス解消手段として有効ではなく、単にニコチンの禁断症状を緩和するにすぎない、と禁煙成功者の半数が気づいている。
 ただし、禁煙開始時あるいは2週間目までは、ストレスや不安を強く感じている。禁煙を開始し、禁煙補助剤によりニコチンが安定供給されていても、本人の生活習慣、タバコのない生活に適応できるまでは、精神状態も安定しない、すなわちストレス状態と感じるのではないだろうか。受診者に応じたカウンセリングやストレス解消法の個別的指導が重要である。当院では、初診時の問診及び個別指導に看護師が1人約1時間かけて丁寧に対応しており、またどんな小さなことでも気軽に連絡してくることを徹底し、なるべく他のスタッフと情報を共有し、対応している。初診時あるいは禁煙経過の中で、ストレス感や抑うつ感が非常に強いと感じた者に対しては、医師と相談し、時に精神安定剤の処方を始めている。
 保険診療になるまでは、3ヶ月目の禁煙継続の確認や連絡が困難で、終了証も郵送していたが、保険診療になり、来院してもらい禁煙継続を正確に確認するとともに、SCLテストで心身の自覚症状の変化やストレス感の変化を自覚してもらうことで、今後の禁煙継続のモチベーションを維持することが期待できると感じた。

図1.SCLの平均点の変化

図2.日常のストレス感

図3.禁煙継続はストレスか

図4.タバコはストレス解消手段か
結語
 
今回の研究は禁煙継続が成功した者の調査であり、禁煙継続がうまくいかない者のストレス状況の調査については今後の課題であると思われる。今回の調査で、喫煙者は比較的強いストレス状態であり、禁煙によりストレス感は増強することなく、3ヶ月間の禁煙で日常生活ストレス感や禁煙に関するストレスも有意に改善しており、よりよいメンタルへルスが得られる傾向が見出された。

引用文献
1) 村上正人,松野俊夫,桂戴作,ほか: 健常人のストレス状態に関する研究 -ストレスによる症状のあらわれかたとその対策について-.心身医療 .1989;1: 72-82.
2) 折津政江,村上正人,桂戴作:人間ドックにおけるストレス感とストレス度.健康医学. 1990;5:115-118.
3) 折津政江,生島壮一郎,小松淳子,ほか:人間ドックにおけるストレスチェックリストの応用と有用性.健康医学.1992;7:152-156.
4) 矢野直子,小松淳子,折津政江:喫煙がメンタルへルスに及ぼす影響(会).総合健診 2005;32:165.
5) Mino Y, Shigemi J, Otsu T, et al : Does smoking cessation improve mental health? Psychiatry and Clinical Neurosciences, 2000;54:169-172.
6) 加濃正人(編):タバコ病辞典.初版.蕨市;2004; 42-44.



Short-term changes in stress as a result of not smoking

Naoko Yano
Japanese Red Cross Medical Center

In Japan, medical treatments to help smokers quit the habit became eligible for insurance coverage in 2006. Despite this incentive, many smokers are unable to attempt to kick the habit claiming that refraining from smoking increases their stress levels. Is it true that not smoking can cause smokers’ stress levels to rise? How does stress change when a smoker does not light up? I assessed the stress change with Wilcoxon Signed Ranks Test.
I conducted a study of 35 patients that came to me for treatment to help quit smoking. The study consisted of two stress checklists (SCL) and questionnaires; one each at the initial visit and after three months. SCL is composed of 30 symptoms and the validity of this self check was confirmed.
The average SCL score for males went from 9.5 (representing mild stress) to 2.7 and for females from 12.0 (significant stress) to 4.1; both showing improvements to normal stress levels.(p<0.001)
The most intense stress was experienced two weeks after last smoking and prior to quitting. Smokers were under considerable stress, but this improved after three months of not smoking. Some respondents reported changes in attitudes such as having a less aggressive frame of mind or having become gentler, thus indicating that quitting smoking does not increase stress levels but instead frees people from stress. Cigarettes do not relieve stress, but simply provide temporary relief from the irritation of nicotine withdrawal.
This study provides clear proof that it is important for smokers to go without smoking for three months if they are to settle psychologically.

Key word: smoking, stress, Stress Check List, Nicotine dependence syndrome


《原著論文》

加濃式社会的ニコチン依存度調査票による女子学生のタバコに対する意識調査(2006年度)
栗岡成人1、稲垣幸司2、吉井千春3、加濃正人4
1.城北病院内科
2.愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科
3.産業医科大学呼吸器内科
4.新中川病院内科

キーワード:加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)、社会的ニコチン依存、喫煙者、非喫煙者、女子学生


はじめに
 日本の成人男性喫煙率は漸減傾向にあり、JT(日本たばこ産業)の調査では2006年の喫煙率は、男性41.3%、女性12.4%、男女計26.3%であった1)。しかし20代女性の喫煙率はこの40年むしろ増加傾向で、青少年の喫煙、特に若い女性の喫煙が憂慮されている。また、タバコ会社は女性と子どもをターゲットにして販売促進活動を続けている。そのため若い女性がタバコに対してどのような意識を持っているかを調査し、解析することは若い女性の禁煙を支援し、防煙教育を進めるために重要である。
 加濃式社会的ニコチン依存度調査票(Kano Test for Social Nicotine Dependence; 以下KTSND)は加濃、吉井らによって開発された、喫煙者・非喫煙者のタバコに対する意識を評価するための簡易質問票で、「喫煙の効果の過大評価(正当化・美化・合理化) および喫煙や受動喫煙の害の否定」を定量化する質問群からなっている2)。社会的ニコチン依存とは2003年に加濃正人が提唱した概念で、「喫煙を美化、正当化、合理化し、またその害を否定することにより、文化性を持つ嗜好として社会に根付いた行為と認知する心理状態3)」とされている。社会的ニコチン依存は、喫煙者個人の心理的ニコチン依存のみならず、喫煙の害を過小評価し、タバコの効用を錯覚する社会や集団の認知の歪み(誤った思い込み)を意味し、非喫煙者のタバコを容認する態度も含む広い概念であり4)、それゆえ前喫煙者、非喫煙者や様々な社会集団においてもKTSNDによる調査検討が可能である。
 筆者らは女子学生のタバコに対する意識について、2005年度より4年制女子大学でKTSNDを用いて調査している5)が、今回は2006年度の結果を分析し、KTSNDの有用性を検討した。

対象と方法
 4年制女子大学生1,608名を対象に、2006年4月の新学期の健康診断時に無記名の自記式質問票(表1)を用いてアンケートを実施した。KTSND(Version 2)の設問内容は表1の問1~10に示すとおりで、KTSNDの配点は問1のみ左から0、1、2、3点、問2から問10までが左から3、2、1、0点、合計30点満点である。また設問11として医療者の喫煙の是非に関する質問を加えた。回答者属性としては学年、学部、年代(10歳代、20歳代)と、喫煙者、前喫煙者、非喫煙者にはそれぞれ表1のような質問を行った。統計処理として、喫煙状況別の比較は一元配置分散分析と多重比較はBonferroniの検定を行った。非喫煙者に対する周囲の喫煙の影響および前年度との比較はt検定を用い、p<0.05を有意とした(SPSS 11.0J for Windows)。
 全学年1,608名のうち1,391名から回答を得られ、そのうち無回答などを除いた有効回答1,296名(1年生:322名、2年生:335名、3年生:311名、4年生:328名)につき解析し、2005年度の結果とも比較した。なお、2005年度の有効回答は1,326名(1年生:359名、2年生:289名、3年生:337名、4年生:331名)であり、1年生に対してはアンケート実施後「知ってほしいタバコの真実」と題してタバコ問題の講演を行った。

結果
1)2006年度の結果
 喫煙状況別の内訳は、喫煙71名(5.5%)、前喫煙39名(3.0%)、非喫煙1,186名(91.5%)で、喫煙率は1、2、3、4年生各々2.5%、3.6%、7.1%、8.8%、全体で5.5%であった(表2)。全学年のKTSND総合得点の平均値は喫煙、前喫煙、非喫煙の各群でそれぞれ16.4±4.5、14.3±4.9、10.6±5.2であり、喫煙群と前喫煙群で、非喫煙群に比べ有意に高値となった(p<0.001)(表3)。
 設問項目別では、点数が高いのは、10.灰皿、7.ストレス、3.嗜好品の順であり、逆に点数が低いのは、8.頭の働き、9.医者の項目であった(表4)。設問2.文化、3.嗜好品以外の全項目において喫煙群で非喫煙群に比べ有意に高値であった(p<0.001)。なお設問4,9,10において喫煙群で前喫煙群に比べ有意に高値であり、設問3,4,6,7,8において前喫煙で非喫煙群に比べ有意に高値であった(p<0.05)。すなわち喫煙、前喫煙、非喫煙3群間全てに有意差があったのは設問4.生活様式、逆に3者間に有意差がなかったのは設問2.文化であった。
2)非喫煙者のタバコに関する意識に周囲の喫煙者が及ぼす影響
 設問「あなたの周りでタバコを吸っている人はいますか?」に「はい」と答えた率は全体で80.1%、父親は40.6%、母親は8.0%、友人は38.8%、恋人は9.7%であった。非喫煙者の中では、周囲にタバコを吸う人がいると答えたグループの方がKTSND総合得点は高い傾向にあり、友人、恋人で有意に高かった(各々p<0.001,p<0.01)(図1)。
3)2005年度と2006年度の比較
 2005年度との比較では、全体の喫煙率、KTSND総合得点の平均値とも前年度(表5,6)より低下していた。コホートでみると2005年1年生、2年生、3年生のコホートの喫煙率は、2005年度1年生は3.3%から3.6%へ、2005年度2年生は3.7%から7.1%へ、2005年度3年生は12.2%から8.8%へ推移し、1,2年で上昇、3年で低下していた。全体のKTSND総合得点は、2005年度1年生は12.1から10.6へ、2005年度2年生は11.0から11.0へ、2005年度3年生は11.9から11.2へと変化し、アンケートを行った後でタバコ問題の講演をした2005年度1年生コホートで前年度に比し有意に低下した(p=0.01)(図2)。

考察
 JTの統計資料6)によると、20歳代の女性の喫煙率は、1965年度が6.6%、2001年度が24.1%であり、ここ40年足らずで約4倍に増加している。すなわち2001年度現在、約4人に1人が喫煙していることになる。また、医療に従事する看護師の喫煙率が一般の女性より高率であることや、妊婦の喫煙率が平成12年には10.0%となっており、特に10代の妊婦の喫煙率は30%を越す高率である7)ことはきわめて憂慮すべき事態である。一方、2004年度未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査8)によると、この30日間に1日以上喫煙した月喫煙率は高校3年生女子では9.7%であった。1996年は15.6%、2000年15.8%であったので、この数年でやや減少傾向に転じたといえる。これは近年の禁煙化の潮流や、小中高校での防煙教育の成果かも知れない。今回の調査でも対象女子学生全体の喫煙率は5.5%で、必ずしも高くはない。しかし学年が上がるにつれ喫煙率は確実に上昇しており、化粧品のようなきれいでスマートなパッケージ、メンソールや様々なフレーバーを添加した吸いやすいタバコ、女性の喫煙に肯定的なイメージのメディア表現など、若い女性をターゲットとしたタバコ会社の販売戦略も決して侮れない。若い女性に対する防煙、禁煙対策の充実が望まれる所以である。
 日本では未成年者喫煙禁止法(1900年制定)などの影響で、20歳になって喫煙を開始するものが多いので、大学で喫煙開始をいかにして防ぐかが課題の一つである。敷地内禁煙など吸いにくい環境を作ると共に、タバコについての正確な情報を計画的、継続的に学生に提供する必要がある。
 喫煙状況別のKTSNDの総合得点では喫煙群、前喫煙群が非喫煙群より有意に高得点であった。また、各設問別でも2項目を除き喫煙群、前喫煙群と非喫煙群の間に有意差を認めた。これまでの報告ではKTSNDの総合得点は喫煙群>前喫煙群≧非喫煙郡の傾向があり、また各設問でも喫煙状況で有意差を認めており3)9)、今回もほぼ同様の傾向であった。2005年度の調査5)と同様、喫煙群と前喫煙群間には有意差がなかったが、これは症例数が少ないこと、禁煙してからの期間が少なく前喫煙者の意識が喫煙者とあまり変わらない可能性があること、が考えられる。
 若年者の喫煙は周囲の環境、特に家族や友人の喫煙行動に影響を受けやすいといわれている10)11)。そして、中高校生の喫煙では家族よりも友人の喫煙で相対危険度が高いことが示されている10)。今回の調査でも女子学生のタバコに対する意識は家族よりも友人、恋人の喫煙により大きく影響を受けていることが示唆された。すなわち若年者は自分が好ましいと思う相手の行動や考え方に影響を受けていると思われる。その意味で有名人、アイドルなどの喫煙は、青少年のタバコに対する意識を大きく左右する可能性がある。このことは青少年の防煙、禁煙を推進するためにも、マスコミ対策が重要であることを示唆するものである。
 前年度の結果との比較では、全体、各学年の喫煙率とも2005年度より低下傾向を示した。喫煙率の低下、総合得点の平均値の低下の要因は、社会全体の禁煙化の流れ、大学の禁煙・防煙教育の成果、大学が敷地内禁煙であることが関与していると思われる。ただし、喫煙者が回答していないため見かけ上低下した可能性もある。筆者は大学より要請を受け、2005年より新入生に「知ってほしいタバコの真実」と題して約90分の講演を行なっているが、2005年1年生のコホート全体の総合得点の低下がタバコの講演によるものかどうかは更なる検証が必要である。

結論
1. KTSNDの総合得点は喫煙群および前喫煙群で非喫煙群に比し有意に高得点で、喫煙者の社会的心理的依存の評価に有用であった。
2. 非喫煙者の中では友人、恋人がタバコを吸う群で有意に総合得点が高く、非喫煙者のタバコに関する意識に対して周囲の喫煙者が影響を及ぼしていることが示唆された。
3. 同一コホートにおける比較では、タバコ問題の講演をした2005年1年コホート全体で有意にKTSND総合得点が低下した。
4. KTSNDは喫煙者のみならず非喫煙者のタバコに対する意識を調査し、教育介入の効果をみるための有用なツールとなりうる。

 本論文の要旨は、みやこ禁煙学会(2007年2月、京都)にて発表した。

謝辞:共著者以外の全ての加濃式ニコチン依存度ワーキンググループメンバーの日頃の熱心な議論に感謝いたします。
(敬称・所属略、五十音順)
相沢政明、青柳智和、安陪隆明、天貝賢二、磯村毅、遠藤明、大島民旗、大谷哲也、大林浩幸、川合厚子、北田雅子、国友史雄、久保田聰美、今野美紀、西條亜利子、鈴木秀樹、瀬在 泉、高山重光、竹中利彦、谷口千枝、谷口治子、長野寛志、中村清一、中村典生、原田正平、原田久、藤原芳人、星野啓一、眞柄佳代子、毛利貴子、山岡雅顕、吉見逸郎

文献
1) JT News Release 「2006年全国たばこ喫煙者率調査」
http://www.jti.co.jp/News/2006/11/20061122_01.html
2) Yoshii C, Kano M, Isomura T, et al: An innovative questionnaire examining psychological nicotine dependence, “The Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND)”. J UOEH 2006; 28:45-55.
3) 吉井千春,加濃正人,相沢政明,ほか: 加濃式社会的ニコチン依存度調査票の試用(製薬会社編).日本禁煙医師連盟通信 2004;13:6-11.
4) 吉井千春, 加濃正人, 稲垣幸司, ほか: 加濃式社会的ニコチン依存度調査票を用いた病院職員(福岡県内3病院)における社会的ニコチン依存の評価.禁煙会誌 2007; 2:6-9.
5) 栗岡成人,吉井千春,加濃正人:女子学生のタバコに対する意識 -加濃式社会的ニコチン依存度調査票Version2による解析-.京都医学会雑誌(投稿中).
6) たばこと健康 喫煙者率の推移
http://www.health-net.or.jp/tobacco/ladies/mr4000006.html
7) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局:平成12年乳幼児身体発育報告書(平成13年10月).
8) 平成16年厚生労働省科学研究費補助金健康科学総合研究事業「未成年者の喫煙実態状況に関する調査研究」班:2004年度未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査(確定版)報告書. 2005年9月.
9) Taniguchi H, Yoshii C, Kano M, et al: The Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND) can reflect smoking status and stages for quitting smoking (abstract). Respirology 2006; 11 (Supple. 5):A178.
10) 尾崎米厚:環境と子どもの喫煙習慣.治療 2005; 87:1965-1973.
11) 遠藤明,加濃正人,吉井千春,ほか:小学校高学年生の喫煙に対する認識と禁煙教育の効果.禁煙会誌 2007; 2:10-12.
表1 タバコに関する意識調査
表1.タバコに関する意識調査

表2 喫煙状況・学年別の内訳(2006年度)


表3 喫煙状況・学年別のKTSND総合得点(2006年度)

表4 喫煙状況別設問別の平均得点(2006年度)

図1 非喫煙者のタバコに関する意識に対して周囲の喫煙者が及ぼす影響

表5 喫煙状況・学年別の内訳(2005年度)

表6 喫煙状況・学年別のKTSND総合得点(2005年度)

図2 同一コホートのKTSND総合得点の推移





Investigation of the perception of female students towards tobacco smoking with The Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND) in 2006

Narito Kurioka1, Koji Inagaki2, Chiharu Yoshii3, Masato Kano4

We sent out a questionnaire to female students at a women’s college and received answers from 1296 respondents. The respondents consisted of 71 smokers, 39 ex-smokers, and 1186 non-smokers. The mean KTSND score of 16.4±4.5 (mean ± SD) for smokers and that of 14.3±4.9 for ex-smokers were significantly higher than that of 10.6±5.2 for non-smokers (p<0.001). Our study confirms that attitudes towards tobacco smoking are deeply influenced by smoking status. In non-smokers, perceptions towards smoking were influenced more by the smoking status of friends and boyfriends than by the status of parents and siblings. Our study also demonstrated that the mean KTSND score for first-year students decreased significantly after they received an informational lecture on tobacco smoking. The KTSND can be adapted not only to smokers but also to ex-smokers and non-smokers; it can be useful in measuring people’s attitudes concerning tobacco, and in evaluating the effectiveness of educational intervention in shaping those attitudes.

Key words: The Kano Test for Social Nicotine Dependence (KTSND), Social nicotine dependence, Smoker, Non-smoker,Female students

1. Johoku Hospital, Kyoto, Japan
2. Department of Dental Hygiene, Aichi-Gakuin University Junior College, Nagoya, Japan
3. Division of Respiratory Disease, University of Occupational and Environmental Health Japan, Kitakyushu, Japan
4. Shinnakagawa Hospital, Yokohama, Japan


《WAT特集》

WALK AGAINST TOBACCO
2006
WEEK 4 REVISITED
Mark Gibbens

 なぜ、歩こうと思ったか
 鹿児島の佐多岬から、北海道の宗谷岬までの約3000 Kmを歩いて、このメッセージを伝えていきたいと考えています。

 あなたの健康を大事にして下さい。
 あなたの家族を大事にして下さい。
 あなたの友達を大事にして下さい。
 あなたの国 を大事にして下さい。
 禁煙は愛です!


 なぜ私がこのキャンペーンを計画したか、それは私はオーストラリアから来ています。オーストラリアは喫煙率の低い国です。でも、昔からではありません。人々が喫煙、受動喫煙の危険を知り、今の数字になっていったのです。政府はとても明確な喫煙の害のCMを流し、タバコの表示も写真付きでわかりやすくしています。タバコ税も高く、建物、バーであっても禁煙エリアは何%と法律で決まっています。
 今、世界の多くの国が禁煙の動きになってきています。政府の広告も日本に比べ、とてもはっきりと喫煙の危険を警告しています。
 ところが、日本は成人男性の47%が喫煙者と、驚く数字です。
 また、若い女性の喫煙率は増えていっているようです。
 これは、喫煙、受動喫煙の危険性の認識がそれほど重要視されてないからではと思いました。ただ、体に悪いとは知っていても、どう悪いのかといった知る機会がない。三度の食事より口にするのに何が成分でそれはどう体に影響する、またその煙の方が害があるのに、その影響もあまり知られていない。吸う人も吸わない人もそこを知る機会もなく、禁煙、分煙と言われてもただ困惑し、憤慨すると思います。それを知るべきだ、知ってもらいたいと歩く事にしたのです。
 また、私自身が主にICUの看護師でした。多くの医師、歯科医師が禁煙を推進しています。吸い続ける事がどんな事になるか、知っている私達が教えてあげなくてはいけない。治す事だけが、医療ではなく予防をする事も医療だと思います。こうして、歩くことも私の日本においてできる看護師としての仕事の一つと考えています。
 こうして、歩く事ははたして意味があるのかと思われるかもしれません。でも、何もしないよりした方がいいと思っています。このメッセージが一人でも多くの人に伝わるきっかけになればいいなと願い、遍路姿で歩きます。


前号からの続き―
 Unfortunately the Kawanes’ tender care overnight had done little to improve the pains stabbing at my leg. Following a delicious breakfast, we and the Kawane family made our way back to the University, to be met again by Mr. Takemoto and two doctors, Dr Kawai and Dr Yamashiro, who had brought their own support vehicle and would spend the day in a three way tag team relay supporting my walk and getting me through the pain barrier as we entered Day 22.
 An hour into the walk saw Dr Kawai and I arriving in Okayama City to be greeted by a TV news crew and straight after that interview, another with a newspaper journalist. Then back to the road. Again walking with the pain and again, following lunch the pain numbed sufficiently for Dr Yamashiro and I to approach a pace of 7km/hr.
 Finally brought the day's walking to a close at around 7pm, 7km short of Ako town but having; completed 53km for the day. Saying goodbye to our three companions, we headed into Ako to our business hotel organised by Dr Iwasa, a yaki-niku dinner, computing and sleep.
 This morning, May 5th we arrived at the start point 7km west of Ako town to find Dr Inamoto waiting for us on his motor bike, and shortly after my start at 8:30am we were joined by Dr Pink and Dr Pinpin in the Sono No-Smoke mobile. Dr Pinpin (Sono) then joined me on the walk through Ako on route 250 and around 11:30 we walked into Dr Iwasa who was waiting for us on the brow of a rather steep hill, having ridden his bicycle from Himeji to meet us. Having packed his bike into the Sono mobile, he joined Dr Sono and myself, in what was for me a very painful descent down the hill to join Route 2 again and continuing on, we arrived at Himeji Castle around 4:30pm having covered 44km and though Dr Sono dropped off the pace towards the end, he completed the distance. It’s amazing the energy non-smokers have.
 As an added bonus, my English student Akiko from Saijo, made a special detour to see me on her way home from a trip to Tokyo. For the past month she had been preparing a special gift and at the end of todays walk presented me with a string of 1000 paper cranes. Knowing how long it takes me to fold a paper crane I am of course really impressed with someone who folds a thousand. It has given me even more determination to continue.
 Thanks to Dr Iwasa and the Himeji Red Cross Hospital we were put up in the Castle Hotel and enjoyed a Japanese dinner with the Sono doctors and Dr Inamoto, who was amazingly still awake, having worked night duty and then assisted with navigation throughout the day on his motorbike. I think we will all sleep well tonight.

 Thankfully for my legs Day 24 was a rest day and started with a small gathering of Himeji anti-smoking members and a silent demonstration/parade through Himeji's shopping mall handing out smoker reform info-tissues and doing a newspaper interview in the process. This was followed by a bento lunch with the parade members and a 30 minute radio interview at FM Genki, with myself and Dr Iwasa and Reiko, where during the intermission they played my friend Jonathan's recording of my song, "Suwanaide Kudasai''.
 From the radio station by taxi to the Himeji Red Cross Hospital, for an official welcome by Dr Iwasa in front of about 30 guests, including the five giant cigarettes from the mornings event, Dr Ohashi (WAT Director) from Niihama and Mr. Morita our pro-cameraman and film crew friends, who after filming the welcome asked if we would return to Himeji Castle for some new pod-cast material before finally arriving at Dr Iwasa's old, rambling, ryokan style house for a doctor cooked grilled meat and vegetables dinner. At which time he was able to show us, the Sonos' and Dr Ohashi a genuine antique cigarette box and cigarettes emblazoned with the Imperial chrysanthemum seal, which used to be presented to loyal and faithful subjects by the Emperor. "Thankfully a practice which I'm told has been discontinued in recent years
 Met the Sono's, Dr Ohashi and an amateur tri-athlete, Mr Sakamoto outside Himeji Castle and set off together in a light drizzle on the morning of Day 25 which was to be a short walk because of events organised in Kobe, so bracing myself against the pain I set off at a brisk pace with no thoughts of stopping until 1 pm. We arrived at the "No-Smoke Hyogo" group welcome at 2pm and were greeted by some 40 members including Dr Oshima who presented me with a large bag of chocolates and a book by a Japanese walker who had crossed Japan. From the meeting room, following a few short speeches and preparations the members made their way to Sannomiya's crowded shopping arcade and began a noisy anti-smoking demonstration with me as their vanguard. They chanted slogans and handed out quit-smoking info-tissues whilst I waved my banner and answered questions from reporters. I have to say, at times like this I still feel very uncomfortable making a spectacle of myself but the other members, especially Dr Pink and Dr Pinpin seem very comfortable. In the evening we attended a small welcome party, attended by 18 No Smoke Hyogo guests and with my legs again wrapped in ice.
 I had planned to do several hours walking the next morning, to get me closer to the centre of Kobe and with good intentions set out on the 20km drive back to Nishi-Akashi to recommence the walk and connect with Mr Matsumoto and Mr Shimizu from ABC TV network who wanted to interview and film me walking. Fortunately for my damaged leg we spent the allocated two hours doing the interview and only walking one kilometre, before having to retrace our steps to the hotel and meet up with Dr Sono. From here, by “smoke-free” taxi and car we visited the Hyogo Prefecture Medical Association at 1 pm where we met and discussed tobacco issues with the vice-president Dr Matsunaga and secretary general, Dr Hara, with the ABC crew continuing to record my progress.
 At 2pm we had a meeting at the Hyogo Prefecture Office with the Vice-Governor Mr Saito, where before we even got through the front door we were greeted again by our friends from ABC TV and by a crew from the local "Sun TV" network. Finally entering the building we were introduced to the President of the Hyogo Medical Association, Dr Seo and his charming wife. I think it is probably thanks to him that we were afforded the courtesy of an audience with the Vice-Governor and the substantial media attention that followed. I think Mr Saito would have liked to steer the conversation with me away from anti-smoking, to how wonderful Hyogo Prefecture is. He tried hard, giving me the key to the prefecture (symbolic) and a very nice picture book of Hyogo. However, as I have said from the beginning, I walk the walk and let others talk the talk, and both Dr Seo and Dr Sono were on hand to give their learned opinions about the state of tobacco reform in Hyogo. Especially about the back-pedalling that has occurred in the Prefecture Office with regard to it being completely smoke-free, and allowing an expensive ventilated smoking room to be built so that public officers who smoke can do less work than their non-smoking colleagues, then rely on their medical benefits to support them when they become sick from tobacco. It would seem that the Prefecture Office is playing politics rather than responsible government.
 Nevertheless, this meeting and the next at the WHO Kobe Center with Director Soichiro Iwao, got our "No smoking is Love" message a long story on Sun TV's nightly news. Whilst the WHO Kobe Center is an impressive building, it appears that its focus is more on research and statistics, rather than policy implementation. Dr Seo, despite his disabilities was again available to lend his influential support and again I was given a nice gift of a framed World No Tobacco Day poster from the Director but I doubt that his office has much more clout than to merely advise Japanese policy makers on what is happening in the rest of the world. Another TV interview outside the WHO building concluded the days agenda.

 Day 27 saw me up at 6am, to get a solid healthy breakfast, before again returning to Nishi Akashi to get in as much walking as possible before our planned 2pm meeting at Nishinomiya City Public Health Office, Osaka. Here Ms. Nomura, my companion for this mornings walk, joined me. Ms Nomura works as a golf caddy and is constantly subjected to passively inhaling smoke from the golfers she supports. I hope for her health such venues become smoke free and I would add that real sportsmen would never smoke. Anyway there is nothing wrong with her fitness at present as she matched me stride for stride covering 24km in three and a half hours at 7km/hr.
 Unfortunately we had to say a hasty goodbye and thank you at Kobe JR train station because we were already late for our next appointment, and had to resort to driving on the expressway to reach Nishinomiya, still a few minutes late. A sandwich lunch and cakes had thoughtfully been provided by Dr Sono at his office, which we gratefully ate whilst being introduced to his volunteers and before our planned activity, a walk through the town, requesting people to quit smoking. Our group of 15, particularly targeted the train stations and city office buildings, chanting the slogans, "Kinen wa Ai" and "Suwanaide kudasai", finishing up at Osaka's famous Koshien Baseball Stadium.
 We checked into our hotel next-door and retired to our room with Dr Sono, Dr Inamoto and Mr Tokumaru who is an Australian trained chiropractor. It was suggested that Mr Tokumaru look at my legs and try to ease the pain. So, with me lying on the hotel bed, he went to work first doing a thorough check. I gathered from the shaking of his head and the repetitive exclamations of "pan-pan!" he was none too pleased with the results of the abuse I have been putting my body through. I later learnt that “pan-pan” means swollen, hard, tight etc. Despite not agreeing with everything he said or recommended, his hands were firm but gentle and I decided to reserve my judgement on the quality of his treatment and accepted an hour and a half long full body massage followed by half an hour of giant ice bag therapy courtesy of the hotel.
 The last day of Week 4 saw me returning by train to Kobe station at 8:30am, allowing Reiko to get some extra much needed rest, whilst I set off at a cautious pace wondering how my legs would fare after Mr. Tokumaru’s special treatment. The worst part of the morning was not my legs but the polluted air around Sannomiya station where the first thing many Japanese commuters worry about after getting off the train is lighting up a cigarette, with no regard for the people around them.
 In the late afternoon I reached my 46km goal, Ibaraki City and having reserved my judgement all day about Mr Tokumaru’s treatment, I can now say without a doubt he has magic hands. The pain which had continued through the morning was now completely gone and the swelling in my left leg was now minimal. With his “secret” techniques he is truly a miracle worker; I have never had a treatment work so well or so fast and I owe him a great debt of gratitude. Healthy again, I am ready to tackle the week ahead as I walk through the large urban centres of Osaka and Kyoto with my message of No Smoking Is Love.

To be continued・・・

5月5日、赤穂の長坂峠にて


5月5日、姫路城に到着


5月5日、千羽鶴のあきこさんの出迎え


5月6日、岩佐さん宅にホームステイ


5月7日、兵庫県喫煙問題研究会の歓迎


5月7日、神戸三宮アーケードをデモ行進


5月8日、WHO神戸・岩尾所長さんと


5月10日、西宮保健所にて

参考サイト:Walk Against Tobacco 2006 (Galleryにいろいろな写真があります)
※WAT:WALK AGAINST TOBACCO


禁煙外来から

診療録(4) 成人5例 未成年4例


 日本禁煙学会では禁煙指導をしているドクターやナースからの申請書類を厳正に審査し、禁煙専門医あるいは禁煙専門看護師として認定しております。その時に提出する診療録がすでに約1,500例集まっております。その中から、毎号数点ずつを選び、作成者の了解を得て、ご参考までに呈示いたすことに編集委員会で決まりました。
 ただし、保険で治療が行われる以前の自費で行われていた時も含まれていますので、そのつもりでご覧下さい。禁煙指導が画一的なものでなく、個々の対象に合わせてアレンジしていくことの必要性を痛感できると思います。
 なお、プライバシー保護のために、個人を類推される可能性のある情報は医学的解釈に影響のない範囲で省略・改変してあります。
編集委員長 作田 学


症例1  52歳 男性

喫煙歴 20歳より32年、1日30本
疾病・既往歴
 検診にて胸部異常陰影を指摘され受診。咳が少しあり、最近食欲が不振である。
禁煙指導
 胸部CTスキャンでは異常陰影なし。胃内視鏡も萎縮性胃炎のみ。検査結果を説明時に、咳、食欲不振に喫煙が関係していることを説明。禁煙の意志があったため、ニコチン依存症の機序について説明。すぐにニコチンパッチを用いた禁煙を希望されたため、ニコチネルTTS30を開始。ニコチネルTTS30は結局28枚投与するも、最後の6枚は使用しなくて済んだとのことである。
禁煙の経過
 1週目:ニコチネルTTS30を1枚貼付し、禁断症状は比較的軽微で、問題なく禁煙できていた。禁煙により、咳の減少を認め、禁煙のメリットを早くも感じた。
 2週目:ニコチネルTTS30を1枚貼付。代償行動法としてキシリトールガムを主に使用する。とくに大きな問題なく禁煙続行。
 3週目:同様に経過
 4週目:ニコチンパッチなしでもやって行けそうな気がしたので、自分でニコチンパッチを中止してみたところ、代償行動法のみにて無理なく禁煙ができる自信がついたとのことにて、以後ニコチンパッチは中止する。
 6週目:禁煙続行するも食欲がでて肥満が進んだとのことで、カロリー制限を指導。タバコを止められて自覚症状も取れ、病気の予防にもなり喜んでいる。
転帰
 その後、禁煙は続けている。
考察
 喫煙の健康に与える影響についての理解力も良く、もともと禁煙したい気持ちがあったところに症状、疾患がみつかり、すんなり禁煙できたものと思われる。ニコチンパッチを急に止めてもあまり禁断症状がでない人があることを良く経験する。


症例2 43歳 男性

喫煙歴 18歳より25年間、1日60本
疾病・既往歴 検診にて胸部網状陰影を指摘され受診
禁煙指導
 胸部CTスキャンにて両側上肺野に壁在性小嚢胞の多発あり、また尿糖陽性でGTT糖尿病型、高血圧傾向もあった。CTスキャンの検査結果を説明する時に、肺嚢胞が喫煙に由来することを説明し、COPDについて説明した。また糖尿病や動脈硬化にも喫煙が悪影響を与えることを説明したところ、禁煙を決意した。ニコチン依存症の機序について説明。ニコチンパッチを用いたほうが無理なく禁煙できると説明したが、希望せず、自分で断煙をやってみると言われるので、代償行動法について説明し、パンフレットも渡した。ところが2日後に、やはり我慢できないとのことで、ニコチン置換療法を希望して来院した。ニコチネルTTS30を開始、14枚、20を14枚、10を14枚投与して禁煙は成功した。
禁煙の経過
 1週目:ニコチンパッチは費用がかかるとのことで、根性型の断煙を試みたが、禁断症状が強く、ニコチネル30を開始した。一番苦しいところで、ニコチンパッチを開始したので、ニコチン依存症の禁断症状を身をもって理解した。
 2週目:ニコチネルTTS30継続使用し、代償行動法としてキシリトールガムを主に使用した。特に大きな問題なく、禁煙続行。
 3週目:ニコチネルTTS20でもやれそうだとの希望あり、処方する。糖尿病があるが、食欲がでてきたため、栄養士による食事指導をおこなった。
 5週目:順調に経過し、ニコチネルTTS10に減量。
 7週目:順調に経過し、自信がついたとのことでニコチンパッチを中止した。
 9週目:糖尿病は食餌療法のみでコントロールが可能である。
転帰
 空腹時に喫煙したくなることがあるようだが、いまのところ再喫煙なし。
考察
 CTにて肺嚢胞を見せ、COPDが喫煙で生じること、すでに糖尿病もでているが、それにも喫煙が悪影響を与えていることなどを説明することで、容易に禁煙を決意した。実際に疾患を併発している人は喫煙との関係をよく説明すれば禁煙の動機づけが容易にできる。


症例3  50歳 男性

喫煙歴 17歳から33年間、1日30本
疾病・既往歴 特記すべきもの無し
禁煙のきっかけ 自身と家族の健康のため
禁煙指導
 職業は会社員。職場は分煙であり、休み時間や食後の一服がやめられず、また休日でも自宅で喫煙していた。定期健診受診の際に産業医から禁煙を勧められ、また自身の年齢も50と言うこともあり、今回本格的に健康を意識して、禁煙外来を受診した。FTND9点とニコチン依存度が高く、受診日よりニコチン置換療法を施行。ニコチネルTTS30から開始し、通常通り8週間使用した。同時に禁煙の効能についての簡単な冊子を渡し、短期的および長期的な禁煙のモチベーションを維持するように精神的なサポートをおこない、定期的に2~4週ごとに受診してもらった。
禁煙の経過
 1週目:タバコが吸えないイライラ感があるも、禁煙パイポやのど飴で口寂しさを解消した。
 2週目:タバコを吸いたい気持ちはあるも、徐々に頻度は少なくなった。
 4週目:他人のタバコの煙が不快に思うようになり、と同時に吸いたい気持ちもほとんどおこらなくなった。
 8週目:吸いたい気持ちもおこらず、またたまにパッチを貼り忘れることもあり、ほとんどタバコを意識しなくなった。
 4ヶ月目:パッチ終了後も再喫煙なく、経過良好である。
転帰
 1年後も禁煙継続中である。
考察
 自身の禁煙のモチベーションをどれだけ維持できるかが重要であり、このケースでは、禁煙の効能についての簡単な冊子が短期的および長期的な禁煙を続けるにあたって有用であったと考えられる。


症例4 年齢30歳 女性

喫煙歴 24歳から6年間、1日20本
疾病・既往歴 特記すべき事なし
禁煙のきっかけ 肺がんに罹患した喫煙者の母親のすすめで来院。
禁煙指導
 ヘビースモーカーの母親が肺がんに罹患。その母親のすすめもあり、禁煙外来を受診した。FTND5点とニコチン依存度中等度と判断した。受診日よりニコチン置換療法を施行、ニコチネルTTS30から開始したところ、不眠を訴えたため、ニコチネルTTS20に変更したが、吸いたい気持ちが収まらず、反動で以前の喫煙本数に戻ってしまった。リセット禁煙を併用しながら、禁煙のモチベーションの維持を試みるも、自宅に帰ると、病気の母親の看病などによる心労の疲れもあり、ストレスが解消せず、3ヶ月後の予定受診日に受診せず、その後連絡なし。
禁煙の経過
 1週目:不眠を自覚。
 2週目:吸いたい気持ちが強く、イライラ感増強。
 4週目:再喫煙し、以前の喫煙習慣にもどる。
 8週目:喫煙の罪悪感にさいなまれるも、自身でのコントロールが困難。
 12週目:頭では理解しているものの行動習慣の変更、修正が不能。
 3ヶ月目:受診せず。
転帰
 禁煙不成功
考察
 ニコチンパッチの副作用である不眠が禁煙の第一歩を妨げた要因と考えられた。本例では身体的依存は中等度であり、ニコチンパッチはニコチネルTTS20より開始し、徐々に漸減する方法かニコチンガムを使用する方が適切であったと考えられる。ニコチン補助薬の適正使用について再考させられた一例であった。
失敗の反省
 1:禁煙の動機が自分の中になく、母親から勧められたこと。
 2:睡眠障害は1週間で終わるので、睡眠薬を使っても良かった。
 3:その結果、不十分のNRTで開始したので、離脱症状が強くでた。
 4:ストレスは離脱症状なのに、母親の看病に原因を求めた。
 ことなどが、失敗の理由であった。


症例5  63歳  男性

喫煙歴 20歳から43年間、1日20本
疾病・既往歴 63歳より慢性閉塞性肺疾患(COPD)
禁煙のきっかけ 定年退職を迎え、年齢的にみても禁煙しようと決意
禁煙指導
 職業は会社員。職場は分煙であるが、会議中はみな喫煙しているとのこと。定期健診の際にCOPDを指摘され、また自身の年齢も63歳と定年間近ということから健康を意識し、禁煙外来を受診した。FTND7点とニコチン依存度が高く、受診日よりニコチン置換療法を施行。ニコチネルTTS30から開始し、通常通り8週間使用した。同時に禁煙の効能についての簡単な冊子を渡し、短期的および長期的な禁煙のモチベーションを維持するように精神的なサポートをおこない、定期的に2~4週ごとに受診してもらった。
禁煙の経過
 1週目:吸えないイライラ感と他人の喫煙をうらやましく思う。
 2週目:イライラ感は減ってきたが、吸いたい気持ちは強くある。
 4週目:口寂しさはあるものの、吸いたい気持ちはほとんど無くなった。
 8週目:他人の喫煙を不快に思うも、口寂しさは解消できず。
 12週目:パッチを止めて2週間後、宴会の際に再喫煙した。
 4ヶ月目:喫煙する日としない日があり、また喫煙しても以前のような満足感は得られないものの、つい口寂しさや手持ちぶさたから喫煙してしまう。ただし、平均喫煙本数は1日数本であり、定年退職後に再度禁煙チャレンジする予定である。
転帰
 ニコチン置換療法施行2週間まで禁煙成功するも以後は禁煙不成功。ただし、今回短時間でも禁煙に成功したことが自身につながり、次回の禁煙に期待したい。
考察
 ニコチン置換療法により、短期的な禁煙が成功するも、再喫煙したケースで長期的には禁煙不成功例である。パッチ中止後の生活指導の説明が不十分であったことと、本人の油断が今回の再喫煙の要因と考えられた。長期的な禁煙成功を視野に入れた禁煙指導マニュアルの作成が必要と考えられた。
失敗の反省
 1:なぜ禁煙するのか、どうして喫煙していたのかを理解していなかった。
 2:ニコチンパッチでイライラが止まらなかったら、ニコチンガムを併用しても良かった。
 3:宴会の際にアルコールが入ると吸いたくなるということを理解していなかった。
 4:1日数本であっても、すぐに元のように戻ると考えられる。


未成年指導シリーズ
 未成年者に対する禁煙指導は難しいものである。
 その理由は、1:自分から本当にやめたいと思ってはいない 2:親が連れてこなければフォローアップができない 3:たいていは親が平気な顔をして吸っており、なぜやめなければならないかを理解していないなどの理由による。また、依存症がすでに確立しているので、身体的依存ばかりでなく、心理的依存にも気を配って治療をしなければならない。米国の一部ではマリファナの治療よりも難しいと言われていることにも一理ある。以下の1~3例は禁煙外来ではなく、養護教諭の指導である。

症例1 16歳 女性

喫煙歴 7年
疾患 なし
禁煙のきっかけ
 喫煙臭が気になる。
禁煙指導の内容
 保健室で作成したポスターや資料を見せ、タバコの害について説明した。その後、本人の禁煙への意欲を確認した後、喫煙道具を処分するように指導した。その後具体的な禁煙方法(お茶を飲む、ガムをかむなど)を指示した。
禁煙指導の経過
 喫煙歴が長いので禁煙することが難しいと思うが、毎日保健室に来室しており、そのたびに禁煙状態を確認し励ましている。
禁煙指導の転帰・結果
 禁煙を決意したところで、禁煙を始めてまだ2週間である。禁煙外来の受診はないが、本人の禁煙への意欲は高いので、丁寧にサポートしたい。


症例2 16歳 男性

喫煙歴 5年
疾患  なし
禁煙のきっかけ
 インフルエンザに罹患し、タバコがいやになった。
禁煙指導の内容
 保健室で作成したポスターや資料を見せ、タバコの害について説明した。その後本人の禁煙への意欲を確認した後、具体的な禁煙方法(氷をなめる、ガムをかむなど)を指示した。
禁煙指導の経過
 ほぼ毎日保健室に来室するので、そのたびに禁煙状態を確認し励ましている。タバコの臭いがすると吸いたくなると訴えるので、タバコに近づかないよう指導した。
禁煙指導の転帰・結果
 禁煙を1ヶ月継続中、友人が喫煙している生徒が多く、喫煙の誘惑が多い環境にいるので、禁煙が継続できるか不安である。必要ならば禁煙外来を紹介する可能性もある。


症例3 17歳 女性

喫煙歴 4年
疾患  なし
禁煙のきっかけ
 食事の味が美味しくないことに気がついた
禁煙指導の内容
 タバコの害について指導し、禁煙を継続できるよう具体策(喫煙場所に近づかない、体を動かす、野菜を食べるなど)を指示した。タバコを購入しないと1年間で約10万円節約でき、お小遣いが増えることを強調した。
禁煙指導の経過
 保健室来室時に経過を確認し、励ましている。食事の味が美味しいと感じるようになり、禁煙の効果を自分で体感している。
禁煙指導の転帰・結果
 禁煙を2ヶ月継続中。本人が予想していたより禁煙することが楽だったので、継続できると思うと話している。


症例4 14歳 男性

喫煙歴 2年 1日5本
禁煙のきっかけ
 父親の影響で中学生になったとき喫煙をはじめる。母親がなんとか学校で見つかる前にやめさせたいという気持ちから来院。家では喫煙を認めてしまっている。
禁煙指導の内容
 依存性は低い。1日5本だけで本数は増えていない。朝、父親と1本ゆっくり吸ってから登校。学校では吸わないで、帰宅して寝るまでに4本吸う。それで本人は満足しているというので、将来的な依存性と喫煙量増加の可能性と父親からの受動喫煙、母親への影響などタバコの特性を理解するよう指導した。
禁煙指導の結果
 本人は理解してくれたが、父親の喫煙も解決しないと母親の心配は現実のものとなるかもしれない。



日本禁煙学会の対外活動記録
(2007年4・5月)
4月16日 JT主導の「未成年者喫煙防止キャンペーン」に反対する声明
4月30日 4月29日付、中日新聞編集担当常務の記事に対する日本禁煙学会の抗議と質問(中日新聞編集担当常務小出宜昭氏に送付。回答は5月9日および14日に電話であり。)
5月 1日 「がん対策・喫煙率引き下げ目標」へのJT意見に対する学会声明および政府への是正指導要請(内閣総理大臣、厚生労働大臣、財務大臣、農林水産大臣、がん対策推進協議会長あてに提出)
5月17日 がん対策推進基本計画(案)に関する御意見の募集(パブリックコメント)について意見提出



日本禁煙学会雑誌
(禁煙会誌)
ISSN 1882-6806

第2巻第5号 2007年6月1日

発行 特定非営利活動法人 日本禁煙学会


〒162-0063
新宿区市谷薬王寺町30-5-201 日本禁煙学会事務局内
電話 090-4435-9673
ファックス 03-5360-6736
メールアドレス 



無断転載や商用利用、フレーム内表示を禁じます。
Copyright (C) 2007 Japan Society for Tobacco Control. All Rights Reserved.